コラム「成功と幸福」|成功者は幸福な人か

いつしか私たちの社会では、成功と幸福とを同一視するようになっているような気がしています。同様に、不成功であれば不幸であることも同一視されているのではと思うこともしばしばあります。

でも、本当に仕事やキャリアで「成功」している人が、本当の「幸福」者なのでしょうか。「不成功」な人は「不幸」な人なのでしょうか。

はたして、他者との比較で年収が多い、学歴が高い、会社員として優秀などといったものを獲得した人に「幸福」が保証されるものなのでしょうか。

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社会から刷り込まれる価値観

私たちは子どもの頃から、親や学校、多くの情報を発信しているメディアなどによって「良い子であること」を求められ、社会のある価値観を植え付けられます。

そのある価値観とは、「競争に勝ち、いい大学を卒業して有名な企業に入り、多くの収入を得ていい暮らしをする」「自分の時間や生活、そして大切な家族との時間や生活を犠牲にして会社の利益に貢献し社会に貢献する」ことが「正しい」「成功者」であるという価値観です。そして、それこそが「幸せな」人生を送れると教育されてきました。

そんな価値観を刷り込まれ、いい大学に入るために頑張って勉強し、特に何も考えずに企業に就職してしまう。20代や30代の若いうちは、それでも頑張って突っ走ることができます。他人と自分とを量的尺度で比較して「収入が多いか少ないか」「競争に勝ったか負けたか」で自分の人生の良し悪しが決まると思い込んでいるからです。

また、企業側も「企業に求められる人材になること」「企業が求める価値を生み出す人材になること」が正しくて成功者であるという価値観やルールを刷り込んできます。

いい例は、企業側がつくった評価システムです。企業にとって有益な目標を設定され、それを達成することで評価され給料やボーナスがもらえる。企業に勤める者であれば多少はやむを得ないことですが、企業側の価値観やルールを否応なしに刷り込まれてしまいます。

しかし、30代の後半あたりから自分本来が心の奥底に抱く考え方や価値観と企業側との間に大きなズレがあることに気づきだします。

多くの人は我慢やあきらめのもと仕事を継続しますが、当然のことながら企業人としてどんなに優秀な人であっても退職と同時に他人から成功者といわれてきた身を守ってくれていた衣は剥がされます。

単に「一企業の中で役にたっていた人」「企業の中での良き歯車」ということでしかないからです。

もちろん、それは誇るべきことですし、それによって得られる幸福もあります。ある程度は企業や社会の価値観やルールを刷り込んでおかないと現代社会の中では生き延びていけないかもしれません。

しかし、自分の価値観をすべて消し去っている人が仕事から切り離されたとき、やりたいことや喜び、生きがいを見出せるものが何もないと思ってしまうと、そこから人生のコントロールがきかなくなる恐れがあります。

衣を剥がされたときには、本当の意味で素の自分自身しかありません。

そこから、何を軸にして生きていくのでしょうか。

やはり、自分にとっての「ゆたかさ」を模索していくことが必要なのではないでしょうか。

日々の仕事の処理と生活を回すがやっとで、そんなことを模索する時間も余裕もないという人がほとんどかもしれません。

しかし、模索することをしないかぎり、仕事もしょせん、食べていくためにしかたなくやっているという「食べるための仕事」という強力な磁石に吸い込まれ、一生忍耐労働の対価として金銭だけが手に入るという形が続いていきます。どこかのタイミングでしっかりと検証し、自分の考え方や価値観といったルールに基づいて生きる道を模索するしかないのではと思います。

成功と幸福は別のもの

世間の価値観で言えば、必ずしも一企業人として「成功者」とはいえない人でも「幸せな」生き方をしている人はたくさんいます。また、仕事やキャリアで成功している人でも自分はなんか幸せじゃないなと思っているケースは多々見受けられます。

そう考えると、「成功」と「幸福」は別のものとして考える必要があります。

そう、成功は他との比較によって生じるものであり、幸福とは自分自身が自ら見いだすものであり、それは人それぞれのオリジナルなものであるということです。一企業や社会、親が「成功者」とする価値観は、あくまで他人との量的尺度によって見られたものであり、自分を本当の意味で幸せにしてくれるとは限らないことに気づくべきなのです。

成功は当然目指すべきものです。ただ成功とか失敗とかということのみを眼中に置いていると、後でしっぺ返しが必ずきます。

幸福もただそれ自体を追ってつかめるものではないような気がします。自分が励みたいと思える何かを見いだし、そのことに没頭することによって生まれるものではないでしょうか。

誰に何と言われようが、あなた自身が没頭できるものです。 あなたが励みたいと思えるものとは一体何なのでしょう。

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