林業大国であるオーストリア|その代表であるウィーンの森の森林施策は

オーストリアは、ヨーロッパ諸国の中では森林率が高いほうで、国土の50%近くを占めています。

森林面積387万haで、森林蓄積は12億立方メートルあり、ha当たりの森林蓄積量は約300立方メートルと充実しています。日本のha当たりの森林蓄積量は約200立方メートルです。

これは、厳しい自然条件等によりha当たりの蓄積量に乏しい北欧に比べて多くなっており、植物の成長において恵まれた気候下にある日本に近い条件となっています。

北欧スウェーデンやフィンランドのha当たりの蓄積量は、約100立方メートルです。

また、森林率では、北欧のスウェーデンやフィンランド等に及ばないものの、同じく中欧に位置するドイツよりも高くなっています。

地形的な特徴においても、ドイツの山岳地域は丘陵地帯が主体であるのに対して、オーストリアの山岳地域には急峻な地形が多く、日本と類似しています。

森林率が高いのは、政府の森林を増やす政策が大きく貢献してきたといえます。

個人や企業などが所有する土地において、樹木植被率が50%以上になると、森林に編入させる制度が森林法にあるためです。

農地や標高が高いところに見られる草地なども、放置すると樹木が繁茂して森林に編入されます。

一度森林になると開発のための建築などは滅多に許可されることはなく、この結果、毎年2000ha程度の森林面積が増加し、2010年までの40年間で森林面積が約30万ha増加しています。

オーストリアでは、森林の総蓄積は日本の4分の1ですが、林業大国です。

2haを超える皆伐が禁止されているにもかかわらず、日本の木材供給量の約6割に相当する年間約1,800万立方メートルの丸太を生産しており、蓄積増加量に対する木材生産量の割合が日本と比べて非常に高くなっています。

また、オーストリアの森林面積の増加については、農地への植林が要因とされており、林業の利回りの高さから、森林所有者による林業への意欲が高くなっていると考えられます。

これらのことから、豊富な森林資源を有しつつも十分な活用がなされていない日本と異なり、森林資源の充実を図りつつ、その資源を十分に活用していることがうかがえます。

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ウィーンの森

オーストリアの首都ウィーン近郊には、広大な森が広がっています。

通称ウィーンの森と呼ばれるこの森の最大の特徴は、都市のすぐ近くにある大規模な森であるということです。

総面積14万ヘクタールのウィーンの森は、ウィーン市だけでなくそれを取り囲むいくつかの町村にまたがって広がっています。

ウィーンの森というのは総称であり、森だけでなく農地や集落なども含んで呼ばれているのです。

まとまった広い森は、主にバルクと呼ばれる貴族の狩猟の森として利用され残されてきたものです。

したがって自然林ではありません。主にシカやイノシシが好んで食べる木の実がなる樹木を選んで残してきた人工の森なのです。

たとえば、2,500haのラインツィアティール・ガルテンの森は、ハプスブルク家の狩猟林として保全されてきました。

この森では11~3月は、今でも狩猟利用が優先されていて、歴史的に狩猟文化が継承されています。

毎年、狩猟期間にはシカやイノシシが千頭近く撃たれ、経済的にも市の収入となっています。

狩猟を通じて、森に棲む野生生物の許容頭数を管理しているということです。

ラインツィアティール・ガルテンの森は落葉広葉樹林で、ヨーロッパブナが最も多き、ヨーロッパナラなどの何種類かの広葉樹が混ざっています。

森は、森林管理署によって丁寧に管理されており、択伐施業が行われます。

これは、太くなったブナやナラを抜き切りして、その後にまた同じ樹木が天然更新するのを助ける施業です。

ブナやナラの大木は家具材や建築材、ワインの樽など高級木材資源としてウィーン市の経済を潤しています。

さらに、狩猟で捕獲された肉はウィーンの森の中にあるいくつものレストランでジビエ料理として、同じく森で収穫されたキノコなどと一緒に提供されています。

循環型社会で一歩も二歩も先を進んでいる感じのする国です。