ココロもからだも元気になる森林浴の効果|休日は森林浴がおすすめです

「森林浴」という言葉は、元林野庁長官がつくった造語です。1982(昭和57)年に朝日新聞紙上で林野庁の「森林浴構想」を紹介したのが始まりです。

「森林の中を歩くとふくいくとした芳ばしい香りがし、人をひきつける魅力がある。植物から発散する揮発性のフィトンチッドにより樹林の空気は清浄であり、いろいろなバイ菌を殺す作用もあって、人間の身体にもよい。森林レクリエーション施設を活用して、とくに都会に住む子どもたちや、若夫婦やお年寄り夫婦にも森林浴を楽しみながら、森林のもっている人間に対するさまざまな効用や役割などについて理解を深めてもらおう」と思って、森林浴構想をまとめたそうです。

夏の海辺で日差しを浴びる行為を「海水浴」と呼ぶなら、森林でフィトンチッドを浴びる行為を「森林浴」と呼ぶ造語の巧みさもこの言葉が浸透した一因でしょう。

この聞きなれない「フィトンチッド」という言葉、一体何のことなんでしょう。

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森林は人間には欠かせないもの

森林は、私たち人間の暮らしや環境に欠かせないものとなっています。

木材や山菜、きのこ等といった生産機能だけでなく、土砂災害の防止、水源かん養機能、さらには地球温暖化防止や生物多様性維持機能、そしてレクリエーション機能など、様々な恵みをもたらしています。

日本学術会議では、森林の公益的機能等の評価額を試算しています。

この中で最も多い評価額となった機能は、土砂災害の防止機能です。

森林の表土は、落ち葉などの堆積物や下草で覆われているため、雨が降ったときに落ち葉や下草がクッションになり侵食されにくい。また、樹木の根が地中に張り巡らされていることから山崩れを防いでいます。

ところが、最近の集中豪雨では、有林地でも山崩れが発生しています。これは、風化が進み、結晶粒子間の結合力が消失した花崗岩などの脆弱な地盤に起因するものと考えられています。

また、森林に降った雨は森林の土壌を通過することで水がろ過され、「おいしい水」を供給しています。

さらに森林の土壌はスポンジのように隙間がたくさんある構造となっており、森林に降った雨はすぐに川に流れ込まずに地中にしみこみ、ゆっくりと川へ流れています。

これが森林による流出の平準化作用で、洪水や渇水の緩和につながっています。

しかし、渇水期においては、森林の蒸発散による水分消失が蓄える量よりも大きくなることから、水源かん養機能の評価が難しくなっているのも事実です。

そのほかにも、光合成により地球温暖化の原因となっている二酸化炭素を吸収・貯蔵し、酸素を供給する機能などを持ち合わせています。

このように森林は、多面的な機能を持ち合わせており、私たち人間が生きていくうえで欠かせない存在となっています。さらに、伐採したら植えることで、何度も再生させることができる循環可能な資源であると言えます。

しかし、これらは森林が健全な状態に保たれることが前提です。

私たち人間は、その機能を健全な状態に保つ役割があります。

人類の祖先は森の中で生きてきた

ヒトの祖先がチンパンジーの祖先と分かれたのは、600万~700万年前だといわれています。いまのチンパンジーやオランウータンが森の中で暮らしているように、私たち人類の祖先も森の中で暮らしていました。

獣を捕らえ、木の実を集め、魚を獲って命をつなぐ食料としていました。樹木の皮や葉で夜露をしのぐ小屋を建て、木を切って燃料にしていました。
森林は食料や水を得る場であり、生活資材を調達する場でした。

この森林なくして、人類は今日まで生きのびてくることはできなかったのです。

私たちが森の中に入るとなんだか落ち着きませんか? ココロとからだが癒される感じはありませんか?

それは、森の中で暮らしてきた人類の祖先のDNAが受け継がれているからかもしれません。

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森林浴

森林浴とは、前述したとおり森林でフィトンチッドを浴びる行為ですが、次のようなことも一般的には森林浴なんだと思います。

森の中をただ歩き、気分転換をする。また、森の中にぼーっとしに行く、なんて人もいるのでは。

昨今はキャンプブームです。ソロキャンプをする人も多いと聞きます。

山の中でぼーっとする時間が心地いいなんていう言葉をよく聞きます。

私も何か煮詰まったことがあれば、ひとりで気分転換に森に行きます。

森に行くというよりかは、山の中を歩きに行くと言ったほうがいいかもしれません。

山の中を歩き、自分と向き合う時間を持つ。これも森林浴なのかもしれません。

このように森の中を歩いていて、爽やかな気分になり心地よくなる体験をした人は多いのではと思います。

ではなぜ心地いいと感じるのか、「森林浴」の効果については客観的な根拠が整っていませんでしたが、数年前から、人の生理的反応を医学的に計測し評価する技術が飛躍的に発達しました。

森林浴がもたらす生体反応を読み取り、森の癒し効果を解明することができるようになってきたのです。

これによると森林浴でリラクゼーション効果や免疫機能の改善など予防医学的効果があることがわかったのです。

森林浴の効果

2004年3月に林野庁から「森林の健康と癒し効果に関する科学的実証調査報告書」というものが出されています。

これによると、森林浴を行った前後に血液検査や心理検査を行った結果、ストレスホルモンが減少し、リラックス効果があるという科学的な根拠が示されています。

それから研究が進み、森林浴は医療関係者までもが関心を持つほどのものへと進化しています。

その研究によると、ココロの影響として森林環境は都市環境と比べ、活気の気分が上がり、怒りや緊張などの気分が有意に下がります。

また、からだへの影響、つまり生理的効果の測定では、血圧・脈拍が下がり、自律神経のバランスが整いストレスホルモンが減少します。

さらに、悪い細菌をやっつけてくれる免疫細胞が増えることもわかっています。

このように人間の身体に良い影響を及ぼしているのが、樹木から放出されるフィトンチッドという物質です。

森林浴とフィトンチッド

森林の中の空気がすがすがしい理由は、樹木などが発散する香りの成分が森林の中にあるからです。

その香りの成分が「フィトンチッド」と呼ばれています。

フィトンチッドという言葉は、これまた造語でロシアの生物学者が命名したそうです。

フィトンとは「植物」を意味し、チッドは「殺す」を意味します。

つまり、植物は自衛手段のためにフィトンチッドを放出していると考えられています。

大地に根を張る植物は、攻撃されても動き回ることができません。そこでじっとしていないといけません。

なので、病害虫の嫌う物質を出したりして、みずからの身を守っている。そう考えられています。

当初はこのように病害虫を殺す物質に焦点が当てられていましたが、「殺す」だけでなく、その放出物質が共生関係にある昆虫を誘引するなど「プラス効果」を果たす物質にも焦点が向けられるようになりました。

今日では、昆虫や病害虫の忌避や誘引作用を果たす物質、抗菌作用のある物質、他の植物を成長させたり抑制させたりする物質も広くフィトンチッドの概念に含まれるようになっています。

フィトンチッドの濃度は木々の樹種や時期によっても異なります。

また広葉樹より針葉樹の方が多く放出し、時期は6月から8月、時間帯は正午前後がピークに達するといわれています。

森林浴と癒し

森に一歩足を踏み入れると、快適な刺激が五感いっぱいに飛び込んできます。

街の刺激は、電車や車の騒音、都市の臭い、眩しい灯りなど、無数の刺激があります。

でも、これらの刺激っていつも身体が欲しているかと聞かれれば、そうでもないと思います。

緑を見ると癒されると感じます。

森の中はやわらかな光に包まれていて、心身をリラックスさせてくれるからです。

なかなか忙しくて森になんか行けないという人や森になんか興味もない人でも、パソコンの画面なんかに緑の風景写真を入れている人がいるのではと思います。

きっと、癒しを求めているのだと思います。緑の風景を画面上で見るだけでも癒されることが分かっているんだと思います。

事実、そんな実験を行っていて、緑の風景写真を画面を通して見ただけで血圧も下がり、脳活動も沈静化することがわかっています。

それと香りについても同じです。

森に入るとなんだか森の匂いを感じます。

あ~ 森の匂いだと思う人も多いと思います。

フィトンチッドの香りに気付く人は少ないと思いますが、森の様々な匂いに気付く人は多いと思います。

嗅覚は五感の中でもダイレクトに脳に刺激がとどく器官です。

アロマテラピーなんかで癒しを求めている人が多いのも、そんな理由からです。

また聴覚についてもあります。

森の中を歩いていると、いろいろな音が聞こえてきます。

鳥のさえずり、沢のせせらぎ、風で葉が揺れる音などです。森の中は静かですけど様々な自然の音で溢れています。

静かだからこそ、それらの音が耳に入ってくるのかもしれません。

時間とともに不規則に変動するものを「ゆらぎ」と呼びます。自然の音は不規則さと規則正しさが調和した「1/fゆらぎ」のリズムがあります。

都市環境では1/fに該当するゆらぎが少ないため、心身にストレスを与えていますが、森の中に入ると自然界のゆらぎが人間のゆらぎと同調し、心地よさを感じストレスの緩和に役立っています。

このように、森の中へ入ると、森の香りを感じ、さわやかな風に包まれる。

また、視界を覆う緑の景色の中にやわらかな日の光が注がれ、せせらぎの音や葉の揺れる音に心が和らぐ。

落ち葉が積もった地面は絨毯みたいにふかふかで、森林内の湿度がからだを潤す。

こんなふうに森林浴をイメージするだけでも癒されませんか?

実際に、そんな経験がある人は、今の文書を読んだだけでもイメージが湧き癒されているはずです。

時々、休みの日に森林浴に出掛けてみる。

きっと、ココロもからだも元気になります。

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