広島の森で深刻になりつつある松枯れとナラ枯れの被害|広島の森の現状

広島県の面積は848,000haで、森林面積は612,356haとなっていて、県の約72%が森林ということになります。

樹種別の分布を見ると、太田川流域筋においてはスギが多く、江の川上流域を中心にヒノキが広く分布しています。

これらのスギ・ヒノキの多くは、木材生産を目的として、主に戦後から植林されてきた「人工林」です。

県中央部から瀬戸内海沿岸にかけては「アカマツ林」が広く分布しており、森林面積の約1/3を占めています。

そして、なんとその分布面積は全国1位となっています。

ちなみに、アカマツ林の分布面積第2位は山口県、第3位は兵庫県、第4位は岡山県となっており、瀬戸内海沿岸県に広く分布していることがわかります。

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アカマツ林

アカマツ林とは、マツ科の常緑針葉樹であるアカマツが優占する森林で、本来の自然の姿ではありません。

人の手によって、森林伐採・火入れなどが繰り返された痩せ地ではアカマツが二次林を形成するため、西日本ではアカマツの二次林が広く分布したものと考えられます。

中国地方の森は、もともとは人々が住み始めた氷期にはブナ、ミズナラなどの落葉広葉樹林。温暖な気候になるとシイやカシといった常緑広葉樹林で覆われていました。

しかし、中国山地の標高は低いですよね?
山地の海抜が低く地形的に平坦であるため、人々の豊かな暮らしに伴い、山の奥地まで入り込み、森林を利用するようになったのです。

肥料や薪炭材として落葉・落枝の利用や立木の伐採が繰り返されてきたことに加え、かつて栄えた中国山地におけるタタラ製鉄や沿岸部における製塩や窯業の燃料として、木が切り出されたのです。

要するに、人の手により燃料などを得るために森林伐採が繰り返されたことで自然林からアカマツ林へと変化したのです。

あの宮島の原始林といわれている森も、完全な自然林ではなく、一部は人の手が入ったアカマツ二次林やシイ・カシ二次林です。

では、なぜ原始林と呼ばれるのか。

それは、宮島は水田耕作を中心とした農業が営まれてこなかったため、本土に比べてはるかに自然性の高い二次林であるからです。

まあ、観光地として宮島の原始林と宣伝したほうが聞こえも良くて人が来るからというのもあるのかもしれませんね。

ところが、アカマツ林は1960年代の燃料革命,肥料革命により利用が減少し、さらにはここ数年でマツ枯れと呼ばれるマツザイセンチュウ病を主な原因としたマツの大量枯死により、アカマツ林は急激に減少しています。

マツザイセンチュウ病はマツノマダラカミキリによって運ばれるマツノザイセンチュウという線虫がマツの樹体内で増殖する際に、マツが水を吸い上げる機能が衰えることにより生じるものです。

マツノザイセンチュウは明治期に日本に侵入した外来生物と考えられています。

一方、1960年代以降の木質燃料から化石燃料への変化や化学肥料の使用にともない、森林伐採や落ち葉掻きなど森林への関与が減少したことにより、アカマツ林において、林床の土壌の肥沃化、コナラやアラカシなどのブナ科の樹種や耐陰性の高い種の定着も生じ、アカマツ林からコナラ林、アベマキ林やアラカシ林などへの遷移が進行しつつあります。

アカマツとは

一般的にマツ科の樹木は痩せた土地でも育つと言われており、このアカマツも例外ではなく、あまり肥沃でない土地でも生育しているアカマツを見る事ができます。

樹皮が赤みがかっている事がアカマツという名前の由来だと言われていて、クロマツが「雄松」と呼ばれることに対比して、「雌松」と呼ばれる事もあります。

アカマツはヤニがでやすく、やや狂いが生じやすいので利用しやすい木材とは言い難い側面も持ちますが寒冷な気候にも耐える事ができるという特徴を持ち、ほぼ日本全域に分布してます。

アカマツは主に建材として使用され、建物の梁、敷居の摩擦部、和室の床柱などに使用されます。

土の中でも腐りにくいという特徴を持つ事から土中杭としても利用されているようです。

材木以外の用途としては樹形を整えやすいという特徴から盆栽への利用があげられます。

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ナラ枯れ

近年では、マツ枯れだけでなくナラ枯れも広島県の県北部で確認されています。

ナラ枯れとは、カシノナガキクイムシという体長5mmの甲虫が運ぶ菌類がコナラ・ミズナラなどのナラ類、シイ・カシ類の樹幹に入り込んで樹幹内に増殖することで、木が生きていくために必要となる水分が幹の中を上がらなくなって木が枯れる伝染病です。

被害を受けた樹木の特徴は、紅葉の時期でなくても葉が赤褐色になり、樹幹の低いところに小さな穴が複数見られ、木の根元にフラスと呼ばれる木のくずが溜まります。

紅葉前に紅葉と勘違いして、木の葉が赤褐色になる山々を見たことがある人も多いのではと思います。

広島県では平成18年度に初めてナラ枯れが確認されており、令和2年度は夏期に少雨・高温が続いたことなどから、被害本数が3,632本となり、対前年度の約2.5倍に増加しています。

このナラ枯れで枯れる樹種(ミズナラ、コナラ、クリ、アベマキ、シイ・カシ類)は、県内でも広い範囲に分布しています。

今では、県の南部でもナラ枯れは確認できるようになりました。遠くから見ても一部が赤褐色になっている山をよく見かけるようになりました。

山の中を歩いていると、いたるところに木の根元に木くずが落ちています。

ついに南部地域まで拡がってきたかーと思っています。

ナラ枯れに伴いどんぐりも減ります。どんぐりが減ればツキノワグマ等の影響も考えられます。

先にも述べたように、瀬戸内海沿岸ではアカマツ林からコナラ林、アベマキ林やアラカシ林などへの遷移が進行しつつあります。

ナラ枯れが広がれば、広島の森はどうなるのでしょうか。

この前、久しぶりに歩いた山は、竹林に変わりつつありました。

前に歩いた時から、10年も経っていません。

いつまでも、この広島の森を遺しておきたいと願っています。

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