臥龍山と掛頭山の稜線を歩く

今回ご紹介するのは、北広島町にある掛頭山と臥龍山です。
その掛頭山の標高は1125.9mで、臥龍山は1223.2mと広島県では高いほう?。

山名については面白いいきさつがあります。昭和の初めころまでは掛頭山は掛津(かけづ)山、臥龍山は刈尾(かりお)山の山名が使われていましたが、昭和10年代にある学者が古事記の大蛇退治の一説はこの地にあるといい、刈尾山は龍が臥したところで臥龍山、掛津山は頭をもたせ掛けたところとして掛頭山と作為的に山名を変えたらしいのです。
地元では刈尾の山名を今でも使っているとのことですが、それ以降の地形図には臥龍山と記載されてきました。しかし、平成8年に発行された国土地理院の地形図から臥龍山の下にカッコ書きで刈尾山と書かれるようになり、地図上にやっと本来の山名が記載されるようになったとのいきさつです。
本来の山名を復活させるのであれば、本来の山名である刈尾山の下にカッコ書きで臥龍山のほうがしっくりくる気もしますが、すでに多くの人々の間でこの山は臥龍山となっていたのでしょうね。

臥龍山山頂
2つの山名を持つ臥龍山(刈尾山)山頂

しかし、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治の一説はこの山にもあったのですね。船通山にしかないものとばかりに思っていましたが。
その学者は、樽床は八つの酒樽を置いた場所と解釈したとのことですが、地名を読めばそんな解釈もありかなと思わなくもないです。

さて、そんな臥龍山ですが、西中国山地の中でブナやナラなどの原生林が残る数少ない山です。
植林地でもなく電波塔が設置されているわけでもないのに、なぜか山頂近くまで林道が走っています。
その臥龍山から北東にのびる丘陵上の山が掛頭山です。掛頭山の山頂は天然記念物であるカシワの純林に覆われていますが、多くの電波塔や東面の芸北国際スキー場のリフトで自然いっぱいな感じはすでに失われています。
しかし、八幡側は有名なミズナラの群生地であり、まだまだ自然は豊かで魅力はたくさん残っています。

掛頭山スキー場側の展望
掛頭山山頂付近の林道から

ちなみに芸北国際スキー場は、かつては日本で唯一6人乗りのリフトが設置されているスキー場でした。
設立者は広島市民なら誰もが知っているあのチチヤスですが、事業不振で運営者は度々変わっています。

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登山口

掛頭山の登山口は八幡原公園と土草峠があります。八幡原公園には駐車場やトイレもあるので便利です。
また、二川(ふたごう)キャンプ場入り口にも駐車場とトイレがありますが、残念ながら私の大好きな二川キャンプ場は閉鎖されてしまいました。あんなにいいキャンプ場は他にはありません。

一方臥龍山の登山口は千町原と聖湖キャンプ場があります。どちらも近くに駐車場はありますがトイレはありません。

臥龍山・掛頭山登山ルート図
地理院地図(ベースマップ)を元に運営者が作成したもの

どちらもバスでのアクセスは困難でしょう。まあ、バスで行く人はいないと思いますが、国道191号線を石見交通のバスが一日2往復しています。広島バスセンターを10時発と時間帯が遅いので日帰り山行は難しいと思います。

登山ルート

掛頭山は八幡原公園や土草峠から、臥龍山は千町原や聖湖キャンプ場から登るのが代表的なルートになります。
周回するルートも可能なのでピストンより周回している人のほうが多い印象を受けます。
しかし、どちらの山も山頂近くまで林道が整備されているので、この林道を使って楽々2座の縦走が私のおすすめです。

そう、山頂近くまで車で行き、掛頭山と臥龍山の稜線を歩くというものです。

楽々と思いがちですが、距離が片道約3.5kmあるので往復で約7km歩きます。
また、上りの累計標高差がだいたい400mぐらいあるので一つの低山に登るくらいはあります。

でも、それ以上に何といっても標高1000m前後のブナやミズナラの原生林が残る稜線歩きは、四季を通じて山の美しさが味わえます。特に新緑と紅葉の時期が最高なのでしょうが、私はなぜか雪が積もる直前の雰囲気が好きです。

臥龍山・掛頭山の稜線
快適な稜線

葉がすべて落ちた山は、鳥のさえずりさえなくなり、雪が降るのに備えて眠りについているような静けさがあります。あの耳鳴りが聞こえるくらいの静寂さが好きでしたが、最近では米軍岩国基地の戦闘機が爆音を轟かしているのでそんな雰囲気すら味わうことができなくなってしまいました。

どちらも林道の終点に数台の車を置けるスペースがあります。臥龍山の林道終点の標高は約1,135m、掛頭山の林道終点はほぼ山頂に近い約1,125mなのでどちらも大差ありません。最低鞍部は984mです。

掛頭山林道との分岐
林道から登山道へ

なお、掛頭山の山頂付近は林道を歩いたほうが無難です。スキー場側の展望が抜群だからです。
ピークは林道脇から少し入った場所にあります。また、臥龍山のピークには展望がありませんが、5分ほど歩いた鞍部に展望地がありますのでそこまで行って折り返すといいです。

掛頭山山頂
掛頭山山頂は林道からすぐ

四季折々に楽しめる稜線は、思わず走り出したくなるような歩きやすい稜線です。ぜひ歩いてみてください。
林道から登山道へ入る場所も踏み跡があるので迷うことはまずないと思います。

バッタリと熊に出会えそうな、そんな静かな山なのでくれぐれもご注意を。
ちなみに私はこの山で登山者に出会ったことはありません。

臥龍山・掛頭山の稜線
葉がすべて落ちた稜線も最高!

掛頭山→臥龍山:約70分
臥龍山→掛頭山:約70分

※注意事項
登山ルート等の内容については、誤解や虚偽のないものであるよう努めていますが、経年変化や、災害による一時的な変化によって、記載された状況が変わっていたり、解釈に見解の相違が生じることがあります。山行の際には、ご自身でも最新の情報を収集してください。