蒜山は岡山県唯一の火山地形で、西から東へ上、中、下の名を冠した3つの峰が連なり、蒜山三山として親しまれています。
大山火山系の山で、北西に伯耆大山を望み、大山隠岐国立公園に含まれており、東から下蒜山・中蒜山・上蒜山の三座からなる火山活動でできた山です。
約 200 万年前に火山活動を開始し、この時、せき止められた湖が、現在の蒜山高原盆地となりました。
大きな湖だった証として、珪藻土が産出されています。
高木林の少ない南麓には蒜山高原が広がり、南西を三平山(みひらやま)や朝鍋鷲ヶ山(あさなべわしがせん)などに囲まれた盆地では、大根やソバなどの畑作とジャージー牛の放牧が営まれています。
蒜山三座はこの雄大な高原風景ともうまく調和した明るい山で、深田久弥の二百名山に選ばれました。
山名の由来は、「野蒜(ノビル)が多く自生する」、「蛭(ヒル)の住む湿地」、「蛾(古語:ヒヒル)が多い」、「肌にヒリヒリする植物が多い」など多くの説がありますが、いずれもこの地に特別当てはまっているわけではなく確証はないみたいです。
蒜山三座の中で眺望がよいのは下蒜山で、5合目付近から上はササ原になっており、上蒜山の一部にブナ林が残っているほかは、大部分が人の手の入った二次林です。
しかし、稜線の縦走路に沿ってイワカガミやシコクフウロなどの高山植物が生育し、山麓の蒜山高原では、ススキ、マツムシソウ、リンドウ、ワレモコウなどの秋の草花が草原を彩ります。
登山ルート
バスでの登山口までのアクセスはありません。
真庭市のコミュニティバスがありますが、湯船口までしかないので自家用車でのアクセスになります。
よって、蒜山三山を縦走しようとするとタクシー利用か車2台を用意する必要があります。それか、中蒜山登山口の駐車場に車を置いて、上蒜山と下蒜山をピストンするしかありません。
この場合、歩行距離約11.5km、歩行時間約5時間45分必要になります。
中蒜山登山口の駐車場は、塩釜温泉の麓にある「ひるぜん塩釜ロッジ」と呼ばれる場所です。登山者も駐車することができますが、お店に一声掛ける必要があります。
話はそれますが、この塩釜温泉(冷泉)の水で育てた魚の釣り堀があって、釣り糸を垂らすと秒殺で釣れたような記憶が...。時間があれば利用してみてください。
また、ここにはキャンプ場もあった記憶があります。ただ、キャンプするなら休暇村の蒜山高原キャンプ場か中蒜山キャンプ場がおすすめです。
特に中蒜山キャンプ場は、雄大な景色が目の前に広がっていて、とっても気持ちのいいキャンプ場でした。
おすすめは犬伏峠から下蒜山と中蒜山をピストンするルートです。標高の最も高い上蒜山は特に行っても行かなくてもいい感じです。
中蒜山まで行けば、蒜山らしい山を味わえ、特に下蒜山の5合目付近からはササ原で眺望に優れ、雄大な蒜山高原を眼下に収めながらの登山となり、下蒜山までの登山でも十分満喫できます。
ちなみに、下蒜山と中蒜山の鞍部(コル)は、フングリ乢と呼ばれています。その昔、巨人が山をまたぐとき、フングリ(睾丸)を引っかけたという伝説が残るコルです(笑)。
下蒜山の登山口には駐車場もあります。向かいの火葬場にトイレと自販機があって、トイレは施設内に入らなくても外から入れるので、ありがたいです。
5合目付近までは、樹林帯の中を歩きます。
登るにつれて、木製の階段が現れ、なかなかの急登が時々現れます。
ロープが張られた急登場所も。
5合目の標識が現れると、蒜山らしい雄大なササ原が現れます。
夏は暑いですが、ここからが気持ちのいいトレイルです。
振り返ると牧草的な風景が広がっています。
目の前に見えるピークは、山頂ではありません。9合目付近です。
気持ちのいいトレイルが続きます。
若干、急登を上ると、
9合目です。最後の登りが待っています。
そして、歩くこと約1時間15分で下蒜山山頂です。
振り返った景色。
中蒜山方面の景色。
ほのぼのとした景色の中、下蒜山までのんびりした気分で登山ができます。
そんな気分なので、中蒜山まで行くのがめんどくさくなるかも!?
そんな時は、引き返しましょう。
ここまでくれば、蒜山は十分満喫したものと思います。
蒜山周辺の地質図
3つの峰の山頂付近は、火成岩です。
火成岩とは、マグマが冷え固まってできた岩石。
安山岩、玄武岩質安山岩とあるので、マグマが急速に冷えてできた岩石であることがわかります。
火砕岩とは、火山活動で放出されたさまざまな大きさの砕屑物が固まってできた岩石のことです。
火山噴火によって生まれた山であることがわかります。
ちなみに、南側に広がる薄緑色の場所は、堆積岩で中期更新世の湖で堆積したもので、下部層の珪藻土層と上
部層の砂層から礫層に区分されます。扇状地となっていることから、山地や丘陵の谷口を頂点とし、低地に向かって砂礫が堆積した扇状の地形となっていて、立体的に見ると、半円錐形をしています。
ちなみに、珪藻とは単細胞性の藻類で珪酸質の殻を持っていて、この地の珪藻が生息していたのは5万年間と推定され、珪藻土の最も厚いところは約100mに達するともいわれています。
崖や急斜面から崩落した岩屑類が、その斜面の下部に堆積した「崖錐堆積物」です。
植生図
上蒜山の山頂付近は、クロモジ-ブナ群集となっています。
クロモジ-ブナ群集とは、落葉広葉樹林でブナが優占する自然林です。
中蒜山と下蒜山山頂付近はササ群落で、古くからタタラ製鉄や薪・炭の生産のための伐採、家畜飼養のための放牧・採草利用や耕地や人工草地の造成などでブナ林を失ったものと思われます。
また、黄土色が植林地なので、スギ、ヒノキなどの植林も多く行われ、その結果、人工林の割合が結構高いです。
※注意事項
登山ルート等の内容については、誤解や虚偽のないものであるよう努めていますが、経年変化や、災害による一時的な変化によって、記載された状況が変わっていたり、解釈に見解の相違が生じることがあります。山行の際には、ご自身でも最新の情報を収集してください。