「RICE」とは、捻挫や骨折などケガ全般の応急手当の基本の頭文字をとったものです。
現場でこの処置を行い、下山後に専門医療機関で診察・治療してもらいます。
一方、ケガのダメージを素早く見極めるための評価法の頭文字をとったものが「DOTS」です。
DOTS/症状を見極める
①DEFORMITY(ディフォミティ)
変形のこと。曲がる角度や捻り具合、可動範囲などを正常なほうと比較してみて判断します。
②OPEN INJURIES(オープン・インジュアリー)
開放性の傷という意味。目で確認できる傷や出血、骨の露出などがあるかどうかをチェックする。
③TENDERNESS(テンダネス)
痛みのこと。幹部にそっと触れてみたり、軽く押したししてみて、痛む位置と痛みの程度を確かめる。
④SWELLING(スウェリング)
腫れの意味。負傷部位の腫れの程度を見る。皮膚の色や熱感もチェック。正常なほうと比較すると分かりやすい。
RICE/応急手当の基本
①REST(レスト)
休養のこと。速やかに運動を中止し、全身や患部を安静に保つことによって回復を早める。
②ICING(アイシング)
冷却のこと。患部を冷やすことで血管を収縮させ、内出血や腫れを抑えます。雪渓など氷で冷やす場合は、直接患部に触れないようにタオルで包む。
又は②IMMOBILIZATION(イモビライゼーション)とする機関もある。
圧迫の意味。テーピングや三角巾などで患部を圧迫することにより、腫れや炎症、内出血を抑制し、痛みを感じにくくなる。ただし、圧迫が強すぎると循環障害をきたすので注意が必要。
③COMPRESSION(コンプレッション)
圧迫の意味。②のイモビライゼーションと同じ。
又は③COOL(クール)とする機関もある。
冷却の意味。
④ELEVATION(エレベーション)
拳上のこと。患部を心臓よりも高く上げることで、痛めた部分に流れる血液量を少なくし、内出血を抑えることができる。
切り傷、すり傷の応急手当
①止血
切り傷、すり傷の応急手当ではまず出血の程度を確認します。
血がビュービュー噴き出している、あるいは、ダラダラと垂れている場合は止血が必要です。
止血は、患部を綺麗なガーゼなどで抑え、できれば患部を心臓より高くして圧迫します(圧迫止血法)。
この際、脱脂綿やティッシュは傷口に繊維が残ってしまうことがあるので使用しないほうがいいです。
また、途中で手を放すと傷口が開いてしまうので、ある程度、出血が止まるまでは傷口を押さえたままにします。
このとき、ヒモなどで腕や足の付け根や先端を縛るのは、血管や神経を傷つける危険があるので行わないほうがいいです。
10分以上圧迫しても血が止まらない場合は、救急車を呼ぶが病院に直行しましょう。
②傷口の処置
傷口の処置は、近年大きく変わっています。
以前は傷口を消毒してガーゼを当てて乾かしましたが、今は傷口には消毒液を使わず、乾燥させない処置を行います。
まず、傷口やその周りの皮膚を水で十分に洗い流し、感染によるリスクを少なくします。
少し痛いですが、石鹸を泡立てて患部を洗うのも良いこととされています。
この水については、雑菌が多いような水を使うのは避けましょう。
傷口に付着している土などの異物をきれいに落としますが、なかに入り込んでいるものを無理にとろうとすることは避けましょう。
傷口の保護は、乾かさずに湿潤にします。
傷口から出てくる浸出液には、皮膚を回復させる効果があります。
これまでのように消毒液を塗ると浸出液が取り除かれ、かえって皮膚の回復を妨げてしまいます。
消毒液は細菌を死滅させると同時に傷口の正常な細胞も殺してしまいます。
また、皮膚の細胞は乾くと死んでしまいます。傷を乾燥させないことで、細胞が増えて皮膚が回復するのです。
私は、ワセリンを持ち歩いていて、そんな場合は傷口に薄く塗り、ガーゼや絆創膏を当てて湿潤状態にしています。
絆創膏やガーゼが汚れたときは、傷口の浸出液や血液の塊をきれいに洗い流し、新しいものと取り換えます。