中房温泉から燕岳・大天井岳・常念岳に登りヒエ平へ降りる山旅

しゃくなげの湯近くの登山者用無料駐車場に車を停め、外の空気を吸う。8月上旬の真夏だというのに安曇野の空気はひんやりしている。

今回の山旅は、ここからバスで中房温泉まで行き、燕岳へ登り、表銀座と呼ばれる道を歩き、大天井岳、常念岳の頂を踏んでヒエ平へと下りる。ヒエ平からタクシーを利用するため、中間地点となるここに車を置いた。

大人であれば2泊3日で歩くコースだが、今回は家族で山に登る。息子はまだ小学3年生である。無理のない計画にするため、3泊4日の行程とした。燕山荘、大天荘、常念小屋のテント場で1泊ずつする。

子どもに少しばかり荷物を担いでもらったが、たくさんの荷物を詰め込んだザックはやはり重たかった。

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燕岳へ

中房温泉でバスを降りると多くの登山者で賑わっていた。登山届をポストに入れ、中房・燕岳登山口から歩き始める。

燕岳登山口
多くの登山者で賑わう登山口

すぐに樹林帯の急登が始まり、エンジンが掛からないうちに息があがってしまった。さすが北アルプス三大急登の一つだけのことはある。第一ベンチ近くにある水場で水を汲み、少し休憩する。程よい感覚でベンチが置かれているとのことで、すべてのベンチで休憩しようと息子に告げた。

燕岳へ向けて樹林帯の急登を登る
北アルプス三大急登の一つを登る

第一ベンチから第二ベンチまでも同じような急登が続いた。荷揚げ用のケーブルが見えると荷物が羨ましく思える。お金払うから自分も揚げてほしいと思う人は結構な割合でいそうな気がする。

第二ベンチから少し楽になるが、第三ベンチから富士見ベンチまでが厳しかった。第一ベンチではしゃいでいた息子も、富士見ベンチではぐったりしていた。

富士見ベンチを過ぎると合戦小屋が近づいてくる。合戦小屋では名物のスイカを躊躇なく購入した。冷たいスイカは、熱くなっていた身体を冷やしてくれ、ずいぶんと心持ちを明るくしてくれた。

合戦小屋
スイカで生き返った合戦小屋

合戦小屋で十二分に休憩した後、最後の急坂を登り合戦沢ノ頭に出た。視界が開け、燕岳や大天井岳も見え、槍ヶ岳もちょこんと頭を出していた。

合戦沢ノ頭からはずいぶんと楽になった稜線上を歩く。尾根を上がらずに右にトラバースすると燕山荘の下に着いた。

さすが人気の山小屋だけあって、多くの登山者でごった返していた。テント場もぎゅうぎゅうだ。急いで受付を済ませ、なんとか見つけたスペースにテントを設営した。

燕山荘と燕岳
燕山荘はヨーロッパ風な外観でオシャレだ

少し登れば稜線なので、夕陽を家族で眺めた。やっぱり山はいいなと心の底から思った。夜中、テントから外に出てみると満点の星空が広がっていた。今にも手が届きそうなくらいの距離に感じた。今まで見たことがないぐらいの星空をいつまでも眺めていた。

夕陽を浴びる燕岳
夕陽を浴びる燕岳

大天井岳へ

2日目、若干雲は多いものの今日も晴れ。しばらくは天気が崩れないとのことで、こんなに好天が続く山旅も珍しい。

今日は大天井岳までしか行かないため、かなり余裕がある。4時間も歩けば着いてしまう。イルカ岩を確認しながら燕岳に空身で登り、テントの数が少なくなったテント場でテントを撤収し、燕山荘でケーキセットを頂いた。朝早くから販売していて随分商売上手だなと感心した。

燕岳への道
空身で燕岳に登る
燕岳のイルカ岩
本当にイルカの形をしていた

5時前に起きたもののそうこうしていると出発は9時となった。今日は、大天荘のインディアンカレーのランチが食べられる時間までに到着すればいいと思っていた。

あまり登り下りのない稜線上の道は蛙岩(げえろいわ)を通り、大下りの頭まで続き快適のひと言。だが、ここから大下りと呼ばれるだけのことはある坂を下り、為右衛門吊岩(ためえもんつりいわ)の下を過ぎ、下った分だけ登り返すと少々バテた。目の前に見える大天井岳への登りが少し気持ちを憂鬱にさせる。

表銀座
大天井岳の登山道が見え憂鬱になる

だが、ここからの道もアップダウンがあまりなく快適な道が続いた。しばらくすると切通岩の鎖場に出たが少し渋滞していた。降りる順番を待っていると反対側から颯爽と走ってやってくる青年が来た。どこから来たのかと聞くと新穂高温泉から槍ヶ岳へ登り東鎌尾根を走ってきたと言っていた。しかも、今朝から登っていると簡単げに言っていた。そんなことが可能なのかとも思ったが、走り去る姿を見ると本当なのかもしれないと思った。

鎖場とハシゴ場を下り、少し進むと槍ヶ岳との分岐。そこから大天井岳の左を巻くように登っていく。ここの登りはなぜか堪えた。今までの快適な道が嘘のような登りが続く。楽ばかりの道はないものだろうかと嘆きたくなる。子どももすぐに足が止まり、なかなか前へ進まない。結局、1時間かけて大天荘へ登った。

昨日よりは楽であったにも関わらず、テントを設営すると子どもは倒れ込むように横になってしまった。小屋のランチ時間が終わりそうだったので無理を言って起こし、インディアンカレーを食した。ケーキといい本格的なカレーといい、なんとも贅沢な1日となった。

夕方、小屋の裏から大天井岳に登ってみた。10分ほどで着き、誰もいない山頂は静かで360°に広がる景色はいつまで眺めていても飽きることはなかった。

大天井岳山頂から槍ヶ岳、穂高連峰
槍ヶ岳と穂高連峰
大天井岳山頂から常念岳方面
明日向かう常念岳方面
大天井岳山頂から燕岳方面
歩いてきた燕岳方面

しかし、ここのテント場は平坦な場所が広いせいか、心持ちにゆとりが生まれる。稜線上だから風が強い日は大変なのかもしれないが、風もなく穏やかな天候も相まって最高のテント場だと思った。

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常念岳へ

3日目は朝から晴天。槍ヶ岳の辺りは雲に隠れていたが、穂高は綺麗に見えた。こんなにいい天気が続くと、バチが当たりそうとつい思ってしまう。

大天荘から槍ヶ岳、穂高連峰
槍、穂高は圧倒的な存在感を示す

しかし、こうも天気が良いと気分は高揚する。身支度もテキパキと進み、7時過ぎには出発した。

が、あまりの絶景の連続に何度も足を止め、景色に見入る。しまいには息子に「早く~」とせかされてしまう。

今日も時間的に余裕がある。常念小屋まで3時間でそこから空身で常念岳まで1時間である。あまり早く歩くのもなんだかもったいないと思ってしまう。

ゆるやかに下っていく道を進む。登ることがほぼゼロに等しい道である。しかも晴天で槍と穂高を見ながら歩く道。いつまでもこんな道を歩いていたい、そう思わせるいい道だった。

槍ヶ岳、穂高連峰を観ながら
槍と穂高を見ながら歩く贅沢な旅

子どもがあまりにも先を進んでいたので、何度も休憩した。雪渓が残る場所では滑って遊んだりもした。やはり下り道の子どもは強い。

眼下に常念小屋の赤い屋根が見えると、あそこまで下ってしまうのかと少し残念な気分となる。少し急な坂を下り、鞍部まで折りきると常念小屋に着いた。まだ誰も着いていないテント場で、一番景色が良さそうな場所を選びテントを設営する。

赤い屋根の常念小屋と常念岳
眼下に見える常念小屋

常念小屋で昼食を頂き、空身で常念岳に登る。燕岳や大天井岳とは違って多くの登山者がいて、さすが百名山は違うなと思った。

あとは下るだけの旅。最後の山頂を惜しむかのように長い時間を山頂で過ごした。

常念岳山頂から
多くの登山者で賑わっていた

テント場に戻ると多くのテントが張られていた。夕刻になってもぞくぞくと登山者が来てテントを設営していく。皆、大天井岳を通過してきたのだろうが、あんないいテント場はないぞと言いたくなった。

今日は最後の夜。帰りたくない気持ちが強いせいか、皆が寝静まっても夜遅くまで外の景色を眺めていた。

ヒエ平へ

最終日の朝、眼下に雲海が広がり、ご来光を観ようと多くの登山者が外に出ていた。反対側を見ると槍と穂高が赤く染まりモルゲンロートの世界観を十二分に堪能できた。

常念乗越からの雲海
雲海が綺麗だった
常念小屋テント場からのモルゲンロート
テント場からモルゲンロートに染まる槍・穂高

今日もピーカンである。こんなに好天が続いた山旅は初めてだ。ガスることも一切なかった。もしかしたら最初で最後かもしれないと思った。

常念小屋でタクシーの手配をお願いして、常念乗越からヒエ平へ向けて一の沢を下る。沢沿いの道は涼しくて後ろ髪を引かれる思いで何度も休憩した。

常念乗越から常念小屋と槍ヶ岳、穂高連峰
一生心に残る山旅となった

登ってくる登山者も多く、挨拶を幾度も繰り返すが、今から山旅が始まるのかと思うとなんだか羨ましかった。

ヒエ平に着くとまだタクシーは来ていなかった。余韻を楽しむかのようにボーと座り込んでしまった。まだまだ山旅をしていたい。そう思わせるいい山旅だった。
タクシーが来てしまった。一生忘れることのない山旅となるだろうなと思いながらタクシーに乗り込み、ヒエ平を後にした。

いまだにこの山旅のことは忘れていない。妻もまた。

※注意事項
登山ルート等の内容については2013年時点のもので誤解や虚偽のないものであるよう努めていますが、経年変化や災害による一時的な変化によって、記載された状況が変わっていたり、解釈に見解の相違が生じたりすることがあります。山行の際には、ご自身でも最新の情報を収集してください。