私がテントを担ぎテント泊した場所で最も多いのは、九重連山にある坊がつるキャンプ場です。三俣山、大船山、平治岳、白口岳、中岳、立中山が望め、特に三俣山の山容が美しくどれだけ眺めても飽きることはありません。
坊ガツルは標高1200m前後の高地にできた湿原で、中央に鳴子川が流れています。一帯は湿生植物の宝庫で、2005年に湿地保全を目的としたラムサール条約に登録されました。
その湿原の中央部にキャンプ場があります。湿原の中の乾燥帯にキャンプ場があるイメージで、よくこんな自然豊かな場所にキャンプ場が設けられたものだと感心したりもします。環境保全的に大丈夫?と思わなくもないですが。
無料で利用でき、蛇口のある水場やトイレ(昔ながらのトイレ)、避難小屋もあるキャンプ場です。さらに、歩いて10分のところにある法華院温泉山荘で500円払えば温泉(石鹸・シャンプー類は使用禁止)に浸かることもできるので最高のキャンプ地だと思います。
法華院温泉山荘のそばにも有料ですが、テント場があります。
坊ガツルの地図
坊がつるキャンプ場へのルート
九重の表玄関口である長者原から雨ヶ池を超えるルートが一般的です。雨ヶ池までは上りですが、雨ヶ池を越えるあとは下りに転じます。コースタイムは、長者原から雨ヶ池まで1時間10分、雨ヶ池から坊がつるキャンプ場まで40分の計1時間50分です。
最短時間で行きたいのであれば、吉部登山口から登ります。駐車場から一部大船林道を歩き、コースタイム1時間30分で坊がつるキャンプ場です。ただし、駐車場は有料で道路も途中から砂利道です。日帰り300円、一泊は500円でかなり広い駐車場です。200円の駐車場も新しくできた?みたいです。
坊がつる賛歌
坊がつる賛歌は昭和27年の夏にあせび小屋で九州大学の3人の学生によって生まれ、昭和53年にNHKの「みんなのうた」で芹洋子さんに歌われてから全国的に有名になりました(同年末のNHK紅白歌合戦において披露される)。もともとは広島高等師範学校(現:広島大学)山岳部歌「雲に消えゆく山男」がベースで、九州大学の学生が替え歌として作ったといわれています。歌の順番が前後したり、芹洋子さんが歌った歌詞と若干違っていたりしますが、「九重山 法華院物語 山と人」(松本徰夫・梅木秀徳編)より引用した歌詞を紹介します。
- 人みな花に酔う時も 残雪恋し山に入り 涙を流す山男 雪解(ゆきげ)の水に春を知る
- 石楠花谷(しゃくなげだに)の三俣山 花を散らしつ藪分けて 湯沢に下る山男 メランコリーを知るや君
- ミヤマキリシマ咲き誇る 山はピンクに大船の 段原彷徨う山男 花の情(なさけ)を知る者ぞ
- 四面山なる坊がつる 夏はキャンプの火を囲み 夜空を仰ぐ山男 無我を悟るはこの時ぞ
- 深山紅葉(みやまもみじ)に初時雨(はつしぐれ) 暮雨滝(くらぞめたき)の水音を 佇み聞くは山男 もののあわれを知る頃ぞ
- 町の乙女ら思いつつ 尾根の処女雪(しょじょゆき)蹴立(けた)てては 久住に立つや山男 浩然(こうぜん)の気は云(い)いがたし
- 白銀(しろがね)の峰思いつつ 今宵湯宿に身を寄せて 闘志に燃ゆる山男 夢に久住の雪を蹴る
- 出湯(いでゆ)の窓に夜露来て せせらぎに寝る山宿に 一夜を憩う山男 星を仰ぎて明日を待つ
- 三俣の尾根に霧飛びて 平治(ひじ)に厚き雲は来ぬ 峰を仰ぎて山男 今草原の草に伏す
坊がつる湿原
東西約0.5km、南北約2kmに渡って広がる湿原にはミズゴケやモウセンゴケ、サワギキョウ、オタカラコウ、ノハナショウブなどが見られます。
乾燥帯にはイブキトラノオ、リンドウ、マンサク、ミツバツツジ、コケモモ、マンネンスギ、ツクシシャクナゲ、ナツツバキなどが生え、花時にはカラフルなテントに負けないくらい見事な彩りで私たちの目を楽しませてくれます。
※注意事項
内容については誤解や虚偽のないものであるよう努めていますが、経年変化や災害による一時的な変化によって記載された状況が変わっていたり、解釈に見解の相違が生じたりすることがあります。山行の際には、ご自身でも最新の情報を収集してください。