現在地確認のためだけなら、コンパスは必要ないと思っています。
地形を的確に読むことができれば、90%以上の確率で現在地が分かります。
コンパスは、その確率を100%にするための道具です。
人間には、どちらが北でどちらが南か、その方位を知る能力を持っていません。
コンパスは、その方位を人間に示してくれる道具です。
コンパスを持つ意味
今の時代はスマホで方位を知るすべがあります。
では、山に入るのにコンパスを持つ意味は何なのか?
それは、ただのコンパスでなくベースプレート型のコンパスを持っていくことに意味があります。
ベースプレート型のコンパスは、単体ではなく地図とセットで使います。
地図上の現在地と目標物をベースプレートの辺に合わし、地図上の磁北線をコンパス内の線と合わす。
その現在地、目標物、作業のすべてが正しければ、目標物は胸のすくほど体の正面に見えます。
そう、コンパスを山に持っていく理由はこの2つです。
①現在地の確認作業において、その証拠を示してくれる。
②先の見えない場所で、目標物への進むべき方向を示してくれる。
体の正面に目標物があることを確認するための道具
でも、コンパスを体から離し、コンパスを持った手だけ動かして確認するのでは、その正確性が失われます。
コンパスは、その矢印が体の軸に対して垂直に出る位置に置くことで正確であると言えます。
ちょうど、おへその上あたりにくっつけるように置く感じです。
コンパスの利用とは、コンパスの指す方向に目標物があることを確認することではありません。
体の正面に目標物があることを確認するための道具です。
コンパスを持った手だけを動かして確認する作業はただのなんとなく確認作業です。
そして、ある程度のズレを見逃す危険があります。
そうではなく、目標物を体の正面に見ることを強く意識すると、目標物が体のまっすぐ先にあるかどうかを見ることとなり妥協しなくなります。
ここにコンパスの利用の正確性が生まれます。
また、磁北線を引くときに磁気偏角を見て引いていると思いますが、あの磁気偏角は毎年少しづづ変わっています。
古い国土地理院地図の磁気偏角値は使わないでください。
まあ、今どき自分で線を引いている人は見かけませんが・・・
コンパスの種類
コンパスには大きく分けて4つの種類があります。
登山には、ベースプレート式のコンパスを持っていくようにしましょう。
ベースプレートコンパス
プレートが透明のプラスチックでできていて、地図の上に乗せて使います。
プレートには目盛りがついていて距離を測ることもできます。登山において最も重要な現在地確認作業、進むべき方向確認作業を行うことができます。
ベースプレートの長辺が長いほうが、その長辺を使って長い距離でも方向を正確にセットできます。
短いのも売ってますが、長いほうがこのような利点があります。
簡易コンパス
ただの方角だけを示してくれるものです。
これだけでの利用の意味は見いだせず、スマホでの代替えも可能です。
サムコンパス
サムコンパスとは親指に装着するコンパスのことで、常にマップコンタクトを要するオリエンテーリングをはじめとするナビゲーションスポーツで使われるコンパスです。
実物を見たことがないためどんなものなのか想像できませんが、「サムコンパス」で検索するといろんなサイトが出てくるので参考にしてください。
レンザティックコンパス
軍事用としても使われるほど精密さが高いコンパス。
他のコンパスよりも目盛りが細かく、正確に角度を割り出せる反面、使いこなすことが難しく重量があることがデメリット。
搭載されたレンズを使って目標と照準線、照門を合わせれば、進むべき方角も割り出せます。
スマホの磁気には注意が必要
スマホは強い磁気を発しています。
なので、スマホと近距離な状態でコンパスを使うのは避けましょう。
試しに、コンパスにスマホを近づけてみると針が動くのがわかります。
スマホをどこかのポケットに入れて登山されている方が多いのではないかと思います(私はズボンの前ポケット)。
そうすると、実際の登山中にコンパスでの確認作業をするときに、そのスマホが入ったポケットの近くで作業すると誤差が生じます。
どれくらい近づけると針が動くのか確認し、近すぎる場合はスマホを入れる箇所を変える必要があると思います。
岩は磁場を記憶している
岩石は、その岩石ができたときの地球磁場の向きを保存しているといいます。
地磁気の向きは数万〜数十万年ごとに逆転を繰り返しており、直近では約77万年前に現在の向きへと逆転したことがわかっています。
つまり、約77万年前まではコンパスの赤針は南を指していました。
よく、磁石の針がぐるぐる回る場所があり、ミステリースポットなんていいますが、その付近の岩石が77万年前より前にできただけという可能性があります。