宮島浦々の神社|歩いて廻ればもうひとつの宮島が見えてくる

波静かな瀬戸内海に浮かぶ島、かつて伊都岐嶋(いつきしま)と呼ばれていた宮島は全島が花崗岩からなる周囲約30kmの島です。

海沿いには国土地理院の地形図を見ても「杉ノ浦」「包ヶ浦」「鷹ノ巣浦」「腰細浦」「樫木浦」「青海苔浦」「養父崎浦」「山白浦」「長浦」「須屋浦」「御床浦」と多くの浦があり、多くの神社が点在しています。

「浦」とは、「入江」ともいわれ陸地が湾曲して海が陸へ向かって入り込んでいる地形のことですが、地形図を見てもそこまで入り込んでいるとは思いません。しかし、多くの場所に「浦」の名がついています。

古くから「安芸の宮島廻れば七里、浦は七浦、七恵比寿」と謳われてきたように、数多くある浦の中で特に七つの浦にある七社が「七浦七恵比寿」と呼ばれ、船に乗り島を一周しながら参拝する神事があります。

この七社とは、「杉之浦神社」「鷹巣浦神社」「腰少浦神社」「青海苔浦神社」「山白浜神社」「須屋浦神社」「御床神社」で、日本の代表的な海の神である「綿津見三神:三社」と「住吉三神:三社」、そして「宗像三女神:一社」を御祭神としています。

一里は1時間ほどで歩ける距離で約4km。七里なので約28kmと昔の人の距離感は確かです。

その神事は「御島巡り」と呼ばれ、有之浦を出発し浦々の神社を廻った後、網之浦に上陸し最後に大元神社に参拝するもので、大元神社の拝殿には多くの「御島巡」と書かれた奉納額が掲げられています。

「御島巡り」は厳島神社の祭神が鎮座の場所を探して、浦々を巡幸されたことにちなむ行事で、案内役を果たしたのが烏といわれています。

いわゆる神烏伝説(おがらすでんせつ)のことで、厳島神社入口の石灯籠の上には、二羽の神烏が乗っていることは皆さんもご存知ですよね?

なお、「御島巡り」は厳島神社により行われる祭祀で、一般の人は参加できません。

観光協会などが船に乗って参拝するツアーを時々やっていますが、大潮の日であれば歩いて一周できるので、歩いて七浦七恵比寿巡りにチャレンジすることもできます。

広大植物実験所~桟橋~青海苔浦神社の間は舗装路があるので歩くのに支障はありませんが、それ以外の区間はちょっと危ない場所もあるので注意が必要です。

歩いて一周する場合は、できれば「御島巡り」と同じように時計回りに廻ることをおすすめします。なお、最後に大元神社にお参りするのを忘れないように。

宮島で街歩きしながら謎解きするゲーム
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第1拝所:杉之浦(すぎのうら)神社

県道沿いにある神社で、御祭神は底津少童命(そこつわたつみのみこと)。

底津少童命は、イザナギが先に旅立ったイザナミを黄泉の国から連れ戻そうとしたが果たせず、その黄泉の国で穢(けが)れた身を清めるために海で禊(みそぎ)を行ったときに水の底からうまれた神様です。

綿津見三神の一神となります。

御島巡りではここに上陸してお祓いを行います。今は利用する人がいるのかどうか分かりませんが、ここには海水浴場が設けられています。

宮島杉ノ浦神社

第2拝所:鷹巣浦(たかのすうら)神社

御祭神は底筒男命(そこつつのおのみこと)。

底筒男命も底津少童命と同様に、イザナギが黄泉の国で穢れた身を清めるために海で禊を行ったときに水の底からうまれた神様で、こちらは住吉三神の一神です。

御島巡りでは海上からの参拝となり、かつては北東側の砂浜の上にありましたが、鷹巣浦に砲台を築造するために移設されています。

その砲台は、鷹ノ巣低砲台として9cm速射砲6門が設置されましたが、その跡地は今では崩壊が激しいです。

山稜部には鷹ノ巣高砲台があり、28cm榴弾砲6門が設置されていたそうです。鷹ノ巣浦と大奈佐美島との間の厳島海峡に進入する敵艦艇を攻撃するために設けられたもので、江田島側にも砲台跡地があります。

120年以上も前の建造物で被爆遺構でないために重要視されていないのかもしれませんが、なかなか見応えのある遺構です。機会があれば訪れてみてください。

宮島鷹ノ巣浦神社
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第3拝所:腰少浦(こしぼそうら)神社

御祭神は中津少童命(なかつわたつみのみこと)。

中津少童命は底津少童命と同様に、イザナギが黄泉の国で穢れた身を清めるために海で禊を行ったときに生まれた神様で、こちらは水の底ではなく水の中の中間地点からうまれた神様です。綿津見三神の一神となります。

御島巡りでは海上からの参拝となります。

ちなみに、ここまでは車や自転車で来れます。

宮島腰少浦神社

第4拝所:青海苔浦(あおのりうら)神社

御祭神は中筒男命(なかつつのおのみこと)。

中筒男命は中津少童命と同様に、水の中間からうまれた神様です。こちらは住吉三神の一神です。

御島巡りの祭は上陸して神事が行われます。

桟橋からここまでは舗装路があります。桟橋から約13kmです。

腰少浦から廿日市市水道局の管理道(舗装路)がありますが、関係者以外立入禁止となっています。

宮島青海苔浦神社

第5拝所:山白浜(やましろはま)神社

御祭神は表津少童命(うわつわたつみのみこと)。

表津少童命は、底津少童命、中津少童命と同じですがこちらは水面からうまれた神様で、綿津見三神の一神です。

水底→水中→水面の順番に参拝して、これで綿津見三神のすべてに参拝したことになります。

小高い丘の上にあるため、ここだけ「浜」という名が付き、御島巡りでは海上からの参拝になります。

なお、海岸沿いを歩くとなかなか気づきにくい場所にあります。

近くまで来たら、注意深く観察しながら歩くことが必要です。

私も気付かずに通り過ぎたことがあります。

第6拝所:須屋浦(すやうら)神社

御祭神は表筒男命(うわつつのおのみこと)。

表筒男命は、底筒男命と同じですがこちらも表津少童命同様水面からうまれた神様です。ただし、こちらは住吉三神の一神です。

こちらも水底→水中→水面の順番で、これで住吉三神のすべてに参拝したことになります。

御島巡りでは神烏への畏敬を込めてここに上陸し、参拝して直会(なおらい)を行います。

直会とは、神前に供えた御饌御酒(みけみき)を神職と参列者の方々で頂くことです。

宮島須屋浦神社

第7拝所:御床(みとこ)神社

御祭神は厳島神社本社と同じ市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)・田心姫命(たごりひめのみこと)・湍津姫命(たぎつひめのみこと)の宗像三女神。

朝廷から御殿を造る許しを得る前に、御祭神を最初に祀った場所で、神社が建つ足元の大きな岩盤の裂け目の模様から厳島神社の御神紋「三ツ亀甲剣花菱紋」が生まれたといわれています。

この神社が一番宮島らしい神社でした。

この神社だけ訪れてもいいのかもしれません。

桟橋から広大研究所まで舗装路を約5.3km歩き、そこから海岸線を約3km歩きます。

宮島御床浦神社

これで、日本を代表する海の神「綿津見三神」と「住吉三神」、そして「宗像三女神」のすべてに参拝したことになります。

ここから、広大の植物実験所までは5kmほど距離があります。

ちなみに、「宗像三女神」の総本宮は福岡県宗像市にある「宗像大社」です。安芸の厳島神社は全国にある厳島神社の総本社ですが、宗像大社が全国に七千余ある宗像神社、厳島神社、宗像三女神を祀る神社の総本社です。

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