高見山と船倉山は広島県廿日市市大野町にある山で、国土地理院の地図に山名の記載がない無名峰です。
高見山の標高は559m、船倉山の標高は545.6mで三角点があります。
宮島から見ると岩肌がむき出しとなっている山で、あの岩場に行けるのなら、そこからの景色は素晴らしいだろうなと誰もが気になっているはず。
そして、あの白くてでっかい建物(王舎城というそうです)も気になる人が多いのでは?
その王舎城のそばを通りましたが、その建物を見上げると「そりゃ目立つよな」と思うぐらいでかかったです。美術館もあるので一般の人もいるのかもしれませんが、でかい敷地の中の道を歩いていると、ある意味不気味で見張られている感がプンプンでした。もしかしたら歩いたらいけない場所を歩いている?と思うほど。
そのでかい建物の裏にある山が高見山と船倉山です。
無名峰だけあってマイナーな山のイメージですが、随所に展望に優れた場所があって登り応えのある山でした。
しかし、登山口が遠い…。
そう、駐車場もなくアクセスが悪いのでマイナーなイメージとなっている印象です。
実際、私自身も廿日市20名山になるまでこの山の存在を知りませんでしたから。
そして、知ってからもなかなか足が向かなかったです。
もう一つ気になっているのは、登山道の途中に「大野鉱山跡」と呼ばれる場所があるとのこと。
調べてみると主に採掘していたのはダイヤモンドの次に硬いとされる金属のタングステン鉱で、極少量の金、銀、銅、鉄鉱も産出しており、坑道跡付近の花崗岩に鉱脈があるそうです。
え?こんな場所に鉱脈?
との事実を知ると、きっと皆さんは転がっている岩石に鉱脈がないものかと探すことでしょう。
私も一応探しましたが…。
昭和12年に始まった日中戦争により特殊鋼の需要が飛躍的に増加したため、軍の管理下のもと昭和16年から昭和19年頃までのたった3年間だけ産出したそうで、産出量も2トンとごく僅か。
たったの2トン?軍需産業だったので採算は度外視だったのでしょうね。
最盛期には50~60人の作業員が働いていたそうで、随所にある石垣などが当時の面影を残しています。
坑道口は4つあり中で繋がっていたそうですが、今では2箇所のみが現存するとのこと。
ここで多くの人たちが作業していたのだと思うと、なんだか不思議な気分になりました。
登山口
代表的な登山口は、「高見川」と「王舎城」です。どちらも駐車場がないため、駅からタクシーで行くか、そこまで歩くしかありません。
中間地点あたりにコインパーキングがないものかと探してみましたが見つからず…。
「高見川」はJR前空駅から約2kmあり、さらにそこからの林道歩きが約1.6kmあります。
そして「王舎城」は、JR宮島口駅からなんと約4.6kmもありました。
せめて「王舎城」だけでも近くでバスに乗り下りしたい気分なので調べてみると、おおのハートバスが麓の住宅街を走っていました。
ただ、最寄りのバス停は王舎城から約2.1km離れた「中山」で便数が極端に少ない…。
さらに麓にある「更地」だと便数はそこそこだけど、王舎城から約3kmは歩かないといけない…。
えっと、駅から歩いたほうが早い?
一般的ではないみたいですが「四季が丘」の登山口があるみたいなので、どうせなら県道30号線にある便数の多い広電バスを利用するほうがいいのかも。
その他にも大野権現山からのルートや「矢草林道」の終点からも登れるみたいです。
登山ルート
どちらの山も花崗岩の山で、登山道は風化した花崗岩で大変滑りやすいです。特に大野鉱山跡~高見山間は急しゅんなので一層滑りやすいです。手袋は必須です。
なので、大野鉱山跡~高見山間は下りで使うのではなく上りで使うほうがいいです。
よって、ルートとしては「JR前空駅」→「高見川」→「大野鉱山跡」→「高見山」→「船倉山」→「王舎城」あるいは「四季が丘」がいいのかな?
登山道の大半は鉄塔の巡視路を利用するもの。下草が刈られて歩きやすい反面、分岐がたくさんあって悩ませます。地図は必須かなと。
JR前空駅から約30分住宅街の中を歩くと、「高見川ルート登山口、大野鉱山跡」の標識のある場所に着きます。
そこからテクテク林道歩き。約20分歩くと選鉱所跡です。
坑道で採掘された鉄マンガン重石(タングステンの原石)をトロッコによってこの選鉱所の最上段へ運び、粉砕された後に選別され、有用鉱は下段の集積所へ集められてバイクで駅まで運ばれたという記録が残っており、登山道からは集積所と思われる平坦地と石垣が確認できます。こんな場所にトロッコ?
選鉱所跡から10分ほど歩けば砂防堰堤のとなりに何段もの石垣が現れます。何かの作業所か宿舎の跡なのかな?
沢を渡るとここからやっと、山道歩き。といっても多くの人が作業していたため道は広い。
10分も登れば「大野鉱山跡」に着きます。
坑道口がぽっかりと開いているので中を覗けますが、なんか怖い…。
松脂を取った跡が残る松や採掘時に発生する不要な石を捨てたズリ場を横に見ながら急な斜面を登り、尾根に出ると視界が開けて宮島が一望。鉄塔のある場所からの景色はなかなか素晴らしかったです。
ここからは尾根歩きなので、随所に展望があります。歩いていても飽きない。
標識のあった場所から90分で高見山山頂に到着。
少し先に展望が利く岩場があったので、そこで昼食。
船倉山は展望がないとのことなので、ここで大休憩(船倉山から大野権現山方面へ300mほど行くと展望のいい岩場あり)。
急坂を一旦下り、標高差60mほどのピークを越える。
巡視路のいい道を歩いていると沢の音が近くなる。こんな山の上に沢?と思っていると、赤褐色の沢が現れます。
地形図を見ると、確かに背後には盆地のような場所があることが分かります。高低差が10mにも満たない、ある意味湿地帯のような場所が広がっているのか?興味が湧いてきたところに、その方向へ延びる道が現れた(矢草林道へ繋がっている)ので行ってみようか思いましたが、次の機会にしました(けど、たぶん次の機会はないです)。
何回か迷わす分岐を過ぎると船倉山に到着。高見山から30分でした。先に行くと展望のいい場所があるので行ってみようかと思いましたが、なぜか足は反対方向へ。
分岐まで戻って「王舎城」へ向けて下山。王舎城越しの宮島を見ながらの下山となりました。
30分も歩けばコンクリートの階段が現れ、もう冬なのに小さなタツナミソウ?違う花なのかな?
白糸の滝を見て不気味な王舎城を見上げながら車道を歩き、「更地」のバス停へ。
丁度いいバスの便がなかったので、結局宮島口まで歩きました。
気になっていた高見山と船倉山。
想像通り、随所に展望のいい場所があり登り応えのあるいい山でした。
でも…
きっともう…
行かないです。
※注意事項
登山ルート等の内容については、誤解や虚偽のないものであるよう努めていますが、経年変化や、災害による一時的な変化によって、記載された状況が変わっていたり、解釈に見解の相違が生じたりすることがあります。山行の際には、ご自身でも最新の情報を収集してください。