登山用レインウェアに求められるもの|そんな高価なものが必要ですか?

登山用のレインウェアですが、その素材はたくさんあって何がなんやらよくわかりません。

各メーカーで開発して、いろんな名前がついてます。

最も有名なのは皆さんもご存じの「ゴアテックス」。

登山靴なんかにも使用されていて、皆さんもお世話になっていると思います。

雨や雪が降ったり、強風が吹いたり、寒かったり、暑かったりと目まぐるしく状況が変化する自然環境の中でも安全に快適に過ごすことができるように機能性素材が使われています。

ただし、アルプスの稜線で暴風雨に遭っても使えるものが最高かもしれませんが、それを夏の低山で着たら暑くて暑くて着れたものじゃないです。

登山用のレインウェアはとても高価なもの。

自分の山行スタイルが、日帰りだけなのか、1泊を伴うものなのか、それとも何日も行うものなのかを考えてから選ぶべきです。

日帰り登山しかしないのであれば、高価な高機能素材のものを買う必要はありません。

というか、買う必要はないかもしれません。

そんな機能性素材、各メーカーが開発したものをまとめてみましたので、なにかの参考にしていただければと思います。

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防水透湿性素材

雨などの水分は衣服内部に浸水させずに、不快さの原因となる湿気(水蒸気)を外側に吐き出す機能をもつのが防水透湿性素材。

濡れるのを防ぎ、蒸れを外に逃がすという相反する機能を備えた素材で、体温低下、体力の消耗を防いでくれます。

メンブレンとなるのは、「疎水性多孔質テフロン(ePTFE)」、「疎水性多孔質ポリウレタン(PU)」、「親水性無孔質ポリウレタン(PU)」と次世代メンブレンともいえる「ナノスケール多孔質ポリウレタン(PU)」の4種類。

ちなみに透湿性能がよく表されていますが、どれだけ透湿性があるか計測する方法が多孔質と無孔質で違います。多孔質は水蒸気を通すので、空気中の水蒸気を何グラム通すかという計測方法ですが、無孔質は水蒸気を通さないので、水(液体)で計測しています。

注意すべきなのは、無孔質の計測方法は水分を通しただけでなく、メンブレンが吸った水の量も効果としてカウントしてしまうこと。

だから同じ素材でも無孔質の計測方法の方が、数値が高く出てしまいます。

透湿性能の数字に惑わされないようにしたいものです。

ゴアテックス

1976年に米W.Lゴア&アソシエーツ社が開発した世界初の防水透湿性素材です。

1平方センチメートルに約14億個もの微細な孔(0.2ミクロン)があいていて、水蒸気は通すけど水はブロックするというもの。

ウェアに限らず、シューズやグローブなど身近な物から宇宙服に渡るまで、幅広い分野で活用されています。

また、HPを覗くとその技術は衣類だけでなく、医療分野など様々なエリアにも展開されています。

ゴアテックスの核となっているのは、ゴアテックス・メンブレンと呼ばれるePTFEと呼ばれるものです。

ePTFEは化学的にどうしても油に弱く、油を吸うといっぺんに耐水性・通気性が劣化するのでポリウレタン膜でコーティングしています。

このコーティングにより通気性は無くなりましたが、耐水能力とメンブレン強度の向上を獲得したということです。

肝心な透湿性能は、ポリウレタンに持たせた親水基により無孔膜であるにもかかわらず落ちることはありませんでした。

それどころか、水蒸気でなくとも(大きな水滴であっても)同じように透湿出来るというのが大きな利点となったのです。

つまり、疎水性多孔質テフロン(ePTFE)に親水性コーティングをしたら、通気性はなくなったけど使えるものができたというもの。

ゴアテックスには、「ゴアテックス」のほかに「ゴアテックス・プロ」と「ゴアテックス・アクティブ」というカテゴリーや様々なテクノロジーがあり、HPを見てもよくわかりません。

ゴアテックスの紹介だけで永遠と続きそうなので、別のページで詳しく勉強してみたいと思います。

耐水圧50,000㎜以上、透湿性25,000~98,000g/㎡・24hrsとなっていて世界最高水準です。

ちなみに、ゴアテックス・メンブレンの表や裏に別の布を貼り合わせ、1つにした生地にしたものが、一般的にいう「ゴアテックス・ファブリクス」です。

eVent(イーベント)

英BHA(現GE)社が開発した防水透湿性素材です。防水性と透湿性に加えて、通気性をもたせることでさらなる快適さが得られるように工夫されていて、登山靴や登山ザックなどにも採用されています。

性能はゴアテックスとeVentはほぼ拮抗しているとの評価です。
ただ両者の顕著な違いは、eVentには通気性があるのですがゴアテックスには無いということ。

eVentはゴアテックスと同じ疎水性多孔質ePTFEメンブレンですが、他の素材でコーティングしていないノンコートです。

よって、常時透湿される状態を保っていることから、透湿性や通気性に関してゴアテックスよりも優れているという評価があります。

ただし、eVentは水蒸気だけを通すことによって透湿機能を保っています。

水蒸気以外、例えば液体の水をべっちょり内側からくっつけても透湿してくれないので注意が必要です。

吸水拡散性素材の服を内側に着ることが求められます。(素肌はNG)

また、ノンコートであるため元々の通気性が保たれているというわけです。

外部からの強風を通すので、防風性には優れていないかもしれません。

POLARTEC NeoShell(ポーラテック・ネオシェル)

フリース素材で有名な米ポーラテック社が開発した防水透湿性素材。

99.9%の防風性と、わずかな通気性を備えることで不快な蒸れを解消しています。

疎水性多孔質PUメンブレンとも次世代ナノスケールPUメンブレン(公表されていないため不明確)ともいわれています。軽くてしなやか、透湿に温度差を必要としないという特徴があり、ポリウレタンなのでストレッチ性があります。

多孔質PUなので、通気性がある反面、風を通すので保温性に欠けそうですが、最適なバランスを調整して保温性も確保しているものと思われます。

「ソフトシェルの優れた通気性とストレッチ性、ハードシェルの防水透湿性を併せ持った素材。高い防水透湿性に加え、通気性も確保し、ウェア内を快適に保つことができます。通気性がありながら、しっかりとした防風加工も施され、冬のアクティビティにも最適なテクノロジー」と謳われています。

こちら、釣具屋メーカーのものですが高い…

DryQ Elite(ドライQエリート)

米マウンテンハードウェアが独自に開発したものです。防水性に加えて、特に透湿性と通気性が高められています。

現在eVentの権利を持っているのがGE社ですが、GE社はeVentを各アウトドアメーカーが独自に付けた名前で売りだすことを許諾しました。

これにより、マウンテンハードウェア社は自社製品に使ってるeVentに細かい改良を加えDryQ Eliteという名前で売りだしたというわけです。

なので、eVentの性能と基本的には同じものと思われます。

ソフトシェル素材と併用されることも多く、新しいアウターシェルの姿を提案しています。

こちらもそこそこの値段です。

OMNI-TECH(オムニテック)

米コロンビアが独自開発したもの。

オムニテックは多孔質メンブレンです。

無孔質メンブレンは、シート状のメンブレンをウェア素材に貼るので、どんな素材にも使えます。一方、多孔質メンブレンは、液状のメンブレン原料をウェア素材に塗るので、柔らかい布素材なんかだと、素材にメンブレンが染み込んでしまって重くなってしまうので、柔らかさや軽さを追求する製品には向いてなかったりします。

アウターのほかにグローブやシューズなどの製品に広く採用されており、より高い通気性と透湿性を兼ね備えた「オムニドライ」もあります。

こちらはなぜか安く感じます。

H2No

昔からゴアテックスと戦ってきたパタゴニア独自の透湿防水機能です。

が、最近のパタゴニアはゴアテックスも採用しており、どうしたのかな?

ポリウレタンコーティングを施された肌側の生地は、数年後には早々と劣化するとの声もあります。

DRYTEC(ドライテック)

我がジャパン企業のモンベル 独自の防水透湿性素材です。

一般的なポリウレタン防水素材の特徴である、防水性を高めると透湿性が低下するという問題を非常に高いレベルで解決した素材です。

多孔質メンブレンで、親水性のある無孔質ポリウレタンをコーティングしています。ゴアテックスと似てますね。

耐水圧20,000㎜以上、透湿性5,000~20,000g/㎡・24hrs。

高いストレッチ性を実現した「ストレッチ・ドライテック」という素材もあります。

耐水圧20,000㎜以上、透湿性15,000g/㎡・24hrs。

エバーブレス

ファイントラック社の独自の素材。ゴワゴワな着心地を改善したい思いから生まれた素材です。

「劣化しにくく、ストレッチする防水透湿メンブレン」という新たな開発に取り組み、豊かなストレッチ性と耐久性を実現するための素材として「ポリカーボネート系多孔質ポリウレタン」を採用しています。

伸縮性には定評があり、大きな身体の動作にも追従する動きやすさはピカイチかもしれません。

パーテックスシールド

パーテックスは、1979年に英国の登山家が開発した薄くて軽量で強靭なナイロン素材です。

パーテックスには「シールド」と「シールド・プロ」がありますが、パーテックスシールドには、無孔質PUメンブレンが使われています。

無孔質PUメンブレンは基本的に親水性で孔は開いておらず、メンブレン内に保水し、それが気化して放出するというメカニズムで透湿します。

親水性無孔質メンブレンは、疎水性多孔質メンブレンと同様にポリウレタン(PU)を原料とするので、ストレッチ性があります。

なお、無孔質PUメンブレンの特徴として軽量化しやすいという点が上げられます。ePTFEや多孔質PUは孔が開いているため、薄くしすぎると破れやすくなってしまうため限界がありますが、無孔質PUは孔が無いため、極限まで薄くすることが可能となります。

なので、200g未満の軽量ジャケット群においてゴアテックス以上の存在感を誇るのがパーテックス系となっています。

一方、「シールドプロ」はポリウレタンを用いた水を弾く性質、いわゆる疎水性の多孔質。
こちらは、孔が開いているため強度的に生地を薄くすることが難しく重量面では不利ですが、湿気は程よく抜けます。

FUTURELIGHT(フューチャーライト)

The North Faceが作り上げた極細のポリウレタン糸を用いた素材です。生地は数百万個ものナノスケールの穴が開いていて、外部から水の侵入を防ぎ、ウェア何の空気分子を逃がすという「通気性」と「透湿性」を兼ね備えている素材。

孔が開いているということで、ポリウレタンを用いた疎水性多孔である「パーテックス・シールドプロ」と共通していますが、製法が大きく異なっています。

疎水性多孔は、孔が上下を貫いていない場合もあるため、空気がメンブレンを通り抜けるという通気性はあまりありません。

しかし、この「FUTURELIGHT(FL) 」に代表されるナノスケールの穴が開いているナノファイバーは無数の穴の間隙をもつ構造体であることから、実際にそして確実に通気します。

よって、そのヌケ感は抜群であるため、このメンブレンが次世代の素材であるといえます。

また、ポリウレタンなので肌触りが柔らかく、薄いウィンドブレイカーみたいにとても柔軟性がありますが、少々お値段が、、、

防風透湿性素材

防水の機能はないけれど、撥水機能があり、風の侵入を防ぎ透湿性があるものです。

シームテープ加工により、防水性を持たせているものもありますが、イマイチ防水透湿性素材と比べたときのメリットがわかりません。

ウインドストッパー

ゴアテックスと同じ米W.Lゴア&アソシエーツ社が開発した防風透湿性素材です。

優れた防風性と極めて高い透湿性を備えたメンブレンが風をシャットアウトし、汗を外に発散する。

防風性と透湿性が風による体温低下を抑えるとともに、活動時のオーバーヒートのリスクを軽減。

との謳い文句です。

ただ、どうもこのジャンルの素材の使い道がよくわからない。

どんな時に利用する?

防風性と透湿性を求めるのであれば、必ず遂行している防水透湿性素材でもいいような気がします。

防風性のないソフトシェル素材のほうが使い勝手がよさそうな気もするのですが、、、

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最後に

初めにも述べましたが、日帰り登山だけしかしないのであれば、高価な登山用のレインウェアを買う必要はないと思います。

雨降っても山行きますか? 途中で雨に降られても3時間もあれば登山口に帰ってこれませんか?

ということです。

しかも日本の樹林帯は、湿度が高いです。大多数の防水透湿素材の基本的なメカニズムだと、湿度の高い樹林帯では、ウェアの外側も高温多湿だから湿気が外に出ていきません。

だから、日帰りの低山ハイクしかしないのであれば、防水透湿素材のレインウェア一択ではなく、どうすれば換気がよくて涼しく歩けるかを考えたほうがいいです。

傘もあります。ポンチョもあります。

どうしても、防水透湿素材のものを買うのであれば、通気の優れたもの、換気の機能を持たせているものを買うことを個人的にはおすすめします。

ナノスケール多孔質PU>疎水性多孔質ePTFE・疎水性多孔質PUですかね?

また、重要なのが撥水性です。

撥水加工は表面に施された後加工のものです。
ある程度着てくると撥水機能は必ず落ちてきます。

撥水性能が落ちた状態では、生地表面に水の膜ができてしまうことになるので透湿ができない状態になります。

防水透湿素材が劣化したのでは?と思う前に撥水性能を見てみてください。
基本的には使ったら毎回洗い、付着しているいろんな汚れを落とす必要があります。撥水処理する前も同様です。

熱を与えると撥水加工が回復するともいわれてますが、ゴアテックスの「乾燥機にかけてください」に対し、パーテックスやネオシェルは「乾燥機の使用は避けてください」とされています。

シームテープの問題なのかもしれませんが、各素材ごとに違うので注意が必要です。

なお、ゴアテックスの使用感を試してみたいのであれば、レンタルで一度使い勝手を試してみるのもありです。こちら のサイトを覗いてみてください。