読図は、低山登山においては最も重要なスキルだと思っています。ある程度高い山は、登山関係者のみが入るためか迷うような踏み跡もあまりありません。これが低山になると状況は一変します。林業や電力事業、地元の人たちが山に入ることが多く、その人たちが付ける踏み跡がたくさんあるからです。そう、低山は道迷いの遭難のリスクが高いのです。山での遭難事故の原因は、道迷いがダントツの1位です。そのリスクを低減するには、自分の位置を地図上で認識しながら歩くしかありません。それは、これから歩く道はどんな道で、次の現在地把握ポイントはどこかといった地図の先読みを繰り返しながら歩くこと、そう、考え想像する登山が重要になります。現在地の事後報告を受けながら歩くことではありません。
登山における地図の読み方とは、現在地を読むということです。現在地を読むとは、目の前にある地形と地図を照合させ現在地を把握すること。的確に読むことができれば、コンパスがなくても90%以上の確率で現在地を把握することができます。自分は今、地図上のどこにいるのか。展望の利く縦走路ではさほど難しいものではありません。しかし、低山や展望の利かない谷沿いの登山道などでは視野は限られ難しい作業になります。そこに地図読みの奥深さがあり、そして楽しさがあります。
コンパスは、現在地確認作業において強力な証拠を示してくれ、また進むべき方向も示してくれるもの。でも、間違った使い方をしてるとその精巧さは失われてしまいます。人間は、方位を体で感じることができません。コンパスはそれを補う道具であり、頼もしい相棒です。それは、コンパスが指す方向確認の精巧さはピカイチだからです。でも、間違った使い方をしてるとその精巧さに驚くことはありません。コンパスの利用とは、コンパスの指す方向に目標物があることを確認することではありません。体の正面に目標物があることを確認するための道具です。
スマホでGPSを利用できる時代となり、便利な世の中になりました。これで道迷い遭難者数が随分と減ったのではないかと思っています(実際には減っていません)。そんな便利な機能、使わないわけにはいきません。ただし、現在地を把握するだけ、あるいはルートを外したときに知らせを受けるなどといった「事後報告」を受けるだけの使用に意味は見いだせません。そこには「先読み」がないからです。先読みは自分で考え想像する力を育みます。でも、事後報告を受けるだけの事柄に対して自分の成長を見いだせますか?登山者としての自立と新しい登山の広がりを見いだせますか?