登山におけるGPSの利用は便利|だけど少しだけ考えてほしいこと

厳冬期では役に立ちませんが、スマホのGPSでも簡単に自分の現在位置を確かめられるようになりました。

「ジオグラフィカ」に代表されるGPSアプリでは、現在地を示してくれるだけではなく登山道を外れれば教えてくれたりある地点に来れば教えてくれたりと、至れり尽くせりです。

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スマホのGPSアプリとGPS専用機の違い

GPS専用機とは、GARMINに代表される専用機器です。

そこそこの値段します。

また、GPSとは「グローバル・ポジショニング・システム」の略でアメリカが運用している衛星測位システムを指します。

アメリカ合衆国が軍事用に打ち上げた約30機のGPS衛星のうち、上空にある数個の衛星からの信号をGPS受信機で受け取り、現在位置を知るシステムです。

受信機の位置を測定するためには4機以上の人工衛星から信号を受信することが必要であり、高精度な測位には8機以上が望ましいとされています。

もしもGPS受信機に搭載されている時計の誤差が100万分の1秒あったとしたら距離の誤差は300mにも及ぶため、最低でも4機以上の衛星から電波を受信しているのです。

しかし、樹林帯などの山間部では受信できる衛星数が少なくなり測位制度が落ちたりする場合もあります。

それを避けるために受信側機器の補助手段によって精度を向上させています。

登山用のGPS受信機では気圧高度計で位置推定の補助手段としたり、磁気コンパスを併用するものもあります。

ただ、スマホに搭載のGPSでは携帯電話の基地局の位置情報を補助情報として用いています。そもそも山間部は電波も入り難いですから、基地局も少なめ。または、基地局なしの状況が考えられます。

そんな状況ですから、やはりスマホよりは専用機のほうが信頼性は高いですよね。

また、気温が低いとまずスマホは電源落ちます。

雪山など厳しい環境下での使用を考えるのであれば、GPS専用機が必要です。

でも、今のスマホのGPS機能は大変優れていると思います。

移動ログがとれたり、音声ナビを備えていたりと。

しかも「気軽」と「楽しさ」を兼ね備えています。

気軽にログをとり、軌跡をWebで公開し、みんなからイイねをもらう。

なんか楽しそうですよね(やってませんが)。

スマホ用のGPSアプリ「ジオグラフィカ」なんか時々使います。かなり進化はしていると思います。

その普及に伴い、道迷いもずいぶん減ったのではないかと思われますが、実際には道迷い遭難の件数、割合ともまったくと言っていいほど減っていません。

「山には危険がついてまわる」という認識を持たず、楽しい山行のレビューを見て、多くの人が気軽に山に入れる事態を招いたことが原因かもしれません。

GPSが普及していない時代の登山

GPSが普及していない時代の登山はどうだったのでしょうか。

それは、地図読み技術を駆使するしかありません。

今みたいに登山者は多くありません。明確な踏み跡もなかったのではないかと思われます。

となると、登るルートを地形図から想像する必要があります。そして、実際に登山するときは現在地を把握しつつ、次の現在地把握ポイントまでのルートをキープし、それを繰り返して麓へ戻って来ていたのでしょう。

でも、それが出来たからこそ新しい山の世界へ足を伸ばすことができたのだと思います。

地図をじっくり見る。そして地形を想像する。

そこへ足を踏み入れてみる。踏み跡ができ登山者が歩き登山道となる。

その技術がなくなると、誰もが新しい世界を見ることが出来なくなります。

新しい景色に出会うことがないのではないかと思います。

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GPSを利用する意味

GPSだけの利用に委ねるのは、やはり登山者としての自立を見いだすことができません。

それは、考え想像することを止めているからです。

現在地の確認に画面を見る。ルートを外したら音声ガイドが知らせてくれる。

それらはすべて事後報告です。

地図読みとの大きな違いは、地図読みは先読みなのに対し、GPSは事後の世界だということです。

GPSの利用に自分で考え想像していることを兼ね備えているのであれば、GPSの効用を最大限に使うべきだと思います。

でも、自分で考え想像する登山を止めたとき、そこに一人の人間として何があるのでしょうか。

自分で考え想像しているものを超える景色に出会ったとき、心が震え、心が動きます。

登山はそれを味わうことができます。

唯一無二の自分の存在に気付かせてくれます。

登山だけに限った話ではありません。

人間として考えることを止めたとき、もはや人間ではなくロボットだけの世界になります。

少しだけでもいいと思います。

自分で考え想像することを止めないでほしいと願っています。

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