広島市で登山初心者におすすめの山は、東区と府中町の行政界にある高尾山です。
高尾山というよりは、山頂直下にある岩峰、岩谷観音跡が目的地。
ここからの景色は、まさに圧巻のひと言。
広島市街地を眼下に、広島湾に浮かぶ島々、そして360°の大展望が待っています。
ここが岩谷観音と呼ばれているのには理由があります。
それは、かつてここには岩谷観音堂があったからです。多くの人の信仰を集め、初観音の日には大きな祭り供養が行われ、多くの屋台も並び、また正月には多くの初詣客でにぎわったそうです。
約700年前に甲斐国を浪人した近藤三郎左衛門によって建立されたといわれています。伊勢の海で魚を取ろうとして網を入れると、重い石仏が何度も網にかかったので、高尾山上に岩谷を建てて祭ったとのいわれです。
その観音堂などは、平成16年の山火事により焼失し、今では高尾山に至る登山道の途中にある境内跡に石積遺構や石碑等が残るのみとなっています。
しかし、今でも岩に掘られた立派な観音様に出会うことはできます。
アクセス
アクセスは車の利用が便利。府中町のみくまり森林公園駐車場を利用します。
ここには管理棟もあってトイレや自販機があるので便利です。
バスの場合は、府中町のコミュニティバス(つばきバス)で行くしかありません。
JR山陽本線の天神川駅近くの「天神川駅北」のバス停から乗車し、「道隆寺下」または「みくまり三丁目」のバス停で下ります。
府中町のみくまり森林公園を通って登山する場合は、「みくまり三丁目」のバス停が最も近いです。
詳しいルートや時刻表は府中町のHPを参考にしてください。
登山ルート
一般的には、府中町のみくまり森林公園内からの登山ルートが一般的でしょうが、ここでは、道隆寺の赤羽根新四国八十八か所の一部を巡りをしながら高尾山へ登るルートをご紹介します。
アカバネとは墓場の意味で、ここら辺一帯はその昔は墓場であったものと考えられており、周辺には数基の小規模な古墳が散在しています(今でも墓場です)。四国八十八か所とあるのは、本場の四国霊場巡拝が困難な人たちのために、道隆寺が1804年頃に四国霊場として建立したものです。
ちなみに第一番と第二番は道隆寺の境内にあり、第3番からは順次、高尾山登山道と雑木林の中に四国八十八か所の霊場の山号を刻んだ石仏が点在しています。
また、道隆寺は806年に弘法大師が開基したものと伝えられている由緒のある古寺です。995年に関白藤原道隆が土地を寄進して七堂伽藍を建立し、名を道隆寺と改めたといわれています。
ただ、寺の周辺からは729年~749年頃の軒丸瓦を出土しているので、古くからこの地には何らかの寺院があったものと考えられています。
広島県重要文化財の薬師如来坐像をはじめ、古文書、棟札など歴史的にも貴重な資料を多く収蔵しているかなり由緒のあるお寺です。
時間に余裕があれば、立ち寄られることをおすすめします。
つばきバスで来た場合は、「道隆寺下」バス停で下車し、道隆寺を経由して高尾山に登ることができます。
また、みくまり森林公園の駐車場に車を置いた場合は、川向かいにある道を上流方向へと少し上り、左手にある線香水と呼ばれる小径を入り、少し逆方向へと歩くことで高尾山へと登れます。
その線香水の小径の周辺の雑木林の中にも、四国八十八か所の石仏が点在しています。
尾根道へ合流し、墓場の中をとおり登山開始になります。
少し登ると、 四国八十八か所の石仏に出会うことができます。先人たちの遺した想いに心を寄せることで歴史を感じてみてください。
ちなみに、石仏は八十八体確認されていて、すべての石仏を巡るには小一時間必要になります。
あとはひたすら尾根道を登ります。
尾根道を上るだけなので、迷うところはありません。所々に景色が開けた場所があるので、振り返ると広島市街が一望できます。
そして、1時間も登れば岩谷観音跡に到着します。
高尾山へは特に行かずにここを目的地としてもいいです。
岩場に登ればこの景色ですから。
武田山の山頂と一二を争うぐらいの圧巻の景色です。
眼下に広がる広島の市街地、そして、広島湾に浮かぶ島々。
時がたつのを忘れさせられるくらいの眺望です。
ちなみに、ここからの夕景、夜景も一級品です。(※下山は真っ暗で相当怖いので注意)
少しずつ灯りだす明かりたちによって、ノスタルジックな世界へといざなわれます。
まさに圧巻の夜景です。
これを見ることができるのは、山に登り勇気をもって暗闇の中を下山できる一部の人のみです。
下山ルート
下山は、上ってきた道を戻り、途中でみくまり森林公園へと向かうルートで下ります。
駐車場までは40分もあれば到着するでしょう。
ちなみに、みくまり森林公園の駐車場は午後5時には閉まりますので注意が必要です。
また、これとは別に、呉娑々宇山(標高681.8m)に登ることも可能です。高尾山を経由し尾根伝いに歩けば山頂に着きます。
ただ、呉娑々宇山に行っても「お~、すごい!」とは個人的にはなりません。たくさん歩きたい人でなければ、個人的にはこの岩谷観音跡で十分だと思います。
※注意事項
登山ルート等の内容については、誤解や虚偽のないものであるよう努めていますが、経年変化や、災害による一時的な変化によって、記載された状況が変わっていたり、解釈に見解の相違が生じることがあります。山行の際には、ご自身でも最新の情報を収集してください。