ロープウェイで楽々西日本最高峰へ|先人に思いをはせる霊峰石鎚山登山

石鎚山は、愛媛県と高知県の県境を東西に連ねる石鎚山脈の主峰で、天狗岳は標高1982mで西日本最高峰であり、徳島県の剣山とともに四国を代表する山です。

天狗岳は、石鎚神社頂上社のある弥山(1972m)の南寄りにあり、弥山と天狗岳間はナイフブリッジで、北面は目もくらむ断崖絶壁で安山岩の柱状節理がほぼ垂直に立っています。
天狗岳に三角点はなく、祠を祀る岩上が西日本最高点となります。

石鎚山天狗岳山頂からの景色
写真はいずれも2015年に登った時に撮影したものです

三角点は弥山からも約600m北西方向に離れ、人が近づかない無名峰に1920.9mの三角点が置かれていて、そこはハクサンシャクナゲの群生地でもあります。

正確には、西日本最高峰の天狗岳、弥山と南尖峰(1982m)の一連の総体山を石鎚山と呼び、日本百名山のひとつで石槌山、石鉄山、石土山と表記されることもあります。
また、古来より山岳信仰の山であり、富士山・立山・白山・大峰山・釈迦ヶ岳・大山とともに日本七霊山の一つに数えられています。

開山の伝承としては、飛鳥時代の657年に、飛鳥時代から奈良時代の呪術者で修験道の開祖として知られる役小角(えんのおづね)とその供をした法仙が、石鎚山近くの瓶ヶ森中腹にて修行の途中、石土蔵王大権現を感得したことから開山されました。
それから間もなく熊野三山の神々である熊野権現の分霊が移され修行道場としても知られるようになったのです。
また、熊野権現は石鎚山と淡路島の諭鶴羽山を経由し、熊野の高倉山に降臨された後、熊野本宮大斎原に鎮座されたと史書に記載があり、平安時代の弘法大師空海も修業したと空海自身が書いた「三教指帰」に記載されていることから、ここに霊峰といわれる所以があり、今もなお山岳仏教や修験道が残る山です。

弥山までの3箇所の鎖の行場はその象徴的存在で、下より「一の鎖」(33m)、「二の鎖」(65m)、最後は「三の鎖」(68m)と続き、「三の鎖」を登り切ったところに奥之宮頂上社が鎮座しています。
ちなみに、頂上社、成就社土小屋遥拝殿山麓の本社の4社を総称して石鎚神社と呼んでいます。
また、「一の鎖」の手前に前社ヶ森の岩峰にかかる「試しの鎖」(67m)があり、この鎖を登り下りできれば、一、二、三の鎖を登ることができるといわれています。

なお、鎖で登れない方には、通常の登山道である迂回路を利用して頂に立ちますが、スリリングな鎖場を克服してこそ得られる達成感は格別なものがあります。

石鎚山三の鎖

かつての登山道は、西条市小松から横峰寺黒川、成就を経て弥山にいたる「横峰超え」が主であり、海抜0mからの山行で途中の黒川で1泊する必要がありました。
ロープウェイで楽々登れる現在とはまさに雲泥の差ですが、それこそ修行の道であったといえます。

昭和に入り、西城から河口にバスが通ることで河口が登山口となり、小松からの参拝が衰退し、河口~今宮~成就コースが栄えました。
しかし、昭和43年に西之川のロープウェイが開通すると、そのコースも忘れられ、季節宿で賑わった今宮や黒川集落は今では廃墟と化しています。

現代社会は、利便性や効率性が重要視される社会です。しかし、先人たちに思いをはせ、昔の道をゆっくり時間をかけて歩くことで新たな石鎚山の一面が見えてくる。そんな気がします。

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登山コース

石鎚山登山ルート図
地理院地図(ベースマップ)を元に当運営者が加工したもの

ロープウェイを利用して石鎚山へ登る場合、JR伊予西城駅からのバスはあるものの本数がかなり少ないです。始発便は、西城駅前を7:47に発車しロープウェイ前に8:41着。料金は大人1020円です。ロープウェイ前発の最終便は17:23発。だいたい3時間に1本程度でせとうちバスさんが運行しています。

自家用車で行く場合は、駐車場が約700円程度で停められますが、途中の道が狭く運転に気を遣います。
ロープウェイは往復2000円で20分間隔の運行でロープウェイから降りると、すでに標高1300mです。
弥山の標高が1972mなので標高差はたったの672mしかありません。広島の極楽寺山をJR廿日市駅から登ると標高差は約680mなので、ほぼ同じです。

登山道は明瞭で、迷うような場所もなく、階段が設置されているなど遊歩道並みに整備されています。唯一の危険箇所は鎖場と弥山から天狗岳間といえます。

鎖場は通常の登山道の迂回路がありますが、鎖場を克服してこそ得られるものが石鎚山登山の醍醐味です。この鎖場を登る時こそ邪心を捨て、無我の境地になるものです。無理は禁物ですがチャレンジしてみてください。自信のない人は「試しの鎖」で試してみるといいです。

石鎚山二の鎖

弥山から天狗岳へは約15分で到着します。シラベが生える南面寄りに踏み跡があるので、そこを歩けばさして高度感は感じません(個人的見解)。ただ岩場への登り下りには細心の注意が必要です。

石鎚山天狗岳途中からの景色

天狗岳の頂に立つと、石鎚山系の山の連なり、瀬戸内海の島々、そして遠くに中国・九州地方の山々まで見える大展望の景色です。ただ、振り返ると目もくらむような断崖絶壁が。また、太平洋からの南風を受ける四国山地なのでガスっていることが多い印象です。

石鎚山天狗岳から弥山を望む

石鎚山は日帰りで登れますが、弥山山頂に石鎚神社頂上山荘があるので一度はそこで宿泊してみてください。5月1日から11月3日までは神職の方が常駐されているので、頂上社の夕拝・朝拝にも立ち会うことができます。
西日本最高峰に泊まる場所があるなんて贅沢すぎます。ここからみる夕景・夜景と朝の景色は格別なもの。

石鎚山弥山山頂からの夕陽

朝は見事な石鎚富士の影が見られます。

石鎚富士の影絵

石鎚山は、古来より山岳信仰の山として登られてきた山です。

石鎚山二の鎖手前から望む

多くの人がいろんな思いを持ちながらこの山に登っていました。
ただ単に百名山の一つに登っているということではなく、鎖場を登り先人たちに思いをはせながら登ると、本来の石鎚山の一面が見えてくると思います。

石鎚山弥山から天狗岳を望む

※注意事項
登山ルート等の内容については、誤解や虚偽のないものであるよう努めていますが、経年変化や、災害による一時的な変化によって、記載された状況が変わっていたり、解釈に見解の相違が生じることがあります。山行の際には、ご自身でも最新の情報を収集してください。本サイトを利用して生じた損失や不都合などについては責任を負いかねます。

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