寿命と徳と福を司る3つの岩峰|三倉岳へと登り瓦小屋山へと縦走する

広島県下屈指の名峰、三倉岳。
その特異な山容から古くから知られていた山で、何でも昭和12年に初登攀されたとか。
第二次世界大戦よりも前です。昔の人はどんな気持ちで山に登っていたのでしょうかね。
今では一般登山道も整備されて、登山初心者でもレジャー感覚でその頂へ立つことが可能となっています。

花崗岩でできた鋭くとがった3つの峰は「三本槍」の名前でも呼ばれ、上ノ岳(朝日岳)、中ノ岳(中岳)、下ノ岳(夕陽岳)の名称で親しまれています。
花崗岩はマサ化しやすいため険しい地形にはなりにくい特徴がありますが、それなりに険しさのある山容の体をなしています。

ちなみに北アルプスにある本場の「槍ヶ岳」は、地上もしくは比較的浅い地下でマグマが冷え固まってできた火山岩で、火山岩塊や火山礫を含む「凝灰角礫岩」でできています。非常に硬くて氷河の浸食への耐性も強い特徴があるので、あの穂先が誕生したのでしょう。

また、同じ北アルプスの「剱岳」は、花崗岩と同じでマグマが地下深い所で固まった深成岩です。稜線部はジュラ紀の閃緑岩で形成されていて、浸食に対しては強い岩石なのであの険しさが残っているのでしょう。

まあ、規模感が全く違いますが。

瓦小屋山途中の岩場から
夕陽岳を西側から望む
登山・山登り・ハイキング・トレッキングツアー

三倉岳はその山容から岩場が多く、中国地方屈指のフリークライミングのゲレンデとして多くのルートがあり、関西や九州方面から訪れるクライマーも多いと聞きます。

そういえば、Bコースで登ったときは必ずクライマーさんたちが岩登りしている姿を目にします。三倉岳休憩所には岩登りゲレンデのコース見取図が用意されているので興味のある方は立ち寄るといいです。

ちなみに岩場の少ない広島県で、昭和初期から岩登りが行われてきた山は鎌倉寺山と天応烏帽子岩山、そしてこの三倉岳だそうです。

山麓には広島国体で使用された人工壁やキャンプ場があり、駐車場も広いです。キャンプ場は無料で利用できて83ものサイトがあるそうです。ただ、1サイト分の面積は広くないのでいわゆるファミリーキャンプでは厳しいかもしれません。当然、オートキャンプ場ではないため荷物の運搬が伴います。

木々に囲まれたキャンプ場は少し薄暗い印象で、ひとりだと夜が少し怖いかもしれません。でも、夏場は涼しいのかな。直火は禁止となっていますが炊事棟があります。

あと、トイレが新しくなっています。2020年にリニューアルしたそうです。

三倉岳登山ルート

そんな三倉岳には伝説も残されています。

その昔、三倉岳の裏側にある浅原を目指していた盲目のお坊さんが詳しい道を聞いても誰も教えてくれなかったので三倉岳の山中で道に迷い、ずいぶん苦しまれたすえに山頂近くの隠坊池で水死したそうです。そして、再びこのような苦しみがあってはならないことを里の人に教えるため、大地震を起こしました。この大地震によってBコース上にある胴乱岩ができ、三倉原の扇岩や栗谷中学校の横の耕中石もこの地震で落ちてきたと伝えられています。この耕中石は地理院地図にも表記されていて、かなりの大きさであることがわかります。見たことがないので何ともいえませんが。

村は大きな被害を受けたことから、村人はこの祟りを鎮めるために麓の宮久保神社に三倉大名神を祀ったと言われています。

三倉岳の岩峯の頂は、古来より神と人間の出会いの場といわれ、一番高い峯は人々の寿命を司る神の山、中の岳は徳を司り、低い峯は福を司るという意味があると言われています。この神々の守りを得るために、地の人々はこの峯の登山を奉納するといっているそうです。

そんなことを知りつつ三倉岳に登ると、また一味違う山登りになりそうです。

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登山口

登山口は1箇所のみ。キャンプ場や人工壁、三倉岳休憩所のある県立自然公園のみです。150台も停められる大型駐車場があります。

マイカーで来るのが一番便利ですが、バスで来られないこともありません。
JR玖波駅から大竹市が運行しているコミュニティバス「大竹・栗谷線」に乗り、「栗谷支所前」が最寄りのバス停です。
土日祝日の運行を見ると、
玖波駅9:10→栗谷支所前9:51
栗谷支所前16:16→玖波駅16:57
なので、結構余裕があります。瓦小屋山の縦走もできるくらいの時間があります。
ただ、料金は片道680円とコミュニティバスとしては高いなぁと思ってしまいます。

登山ルート

3つの峰に立つのであれば、Bコースで上り、Aコースで下るのがベストです。逆コースだと最も危険な鎖場をいずれも降りないといけません。

三倉岳休憩所からキャンプ場の中を通り、Aコースの4合目小屋との分岐を右のBコースへ入ります。比較的緩やかに登ってきた道も次第に傾斜が増してきて、ほとんど階段登りの状態になります。段差も大きかったりするので結構応えます。胴乱岩から少し登った場所にベンチが置かれた眺めのいい休憩所がありましたが、立ち入り禁止となっていました。

鞍部まで登り切ると分岐を右側へ進み、朝日岳へと登ります。分岐からすぐ着きます。

朝日岳からの眺望
朝日岳から

そして、分岐へ戻り登り返すと鎖場を経て中岳へと着きます。さらに鞍部へ下り鎖場を2箇所登ると夕陽岳となります。中岳への鎖場も怖いですが、夕陽岳への鎖場はそれよりも怖いです。足がすくみます。
ただ、山頂からの眺めが素晴らしいのは夕陽岳で、また、多くの人が休憩できるくらい広々としているので夕陽岳に行かないわけにはいきません。
一方、最も怖いのは中岳山頂かな。

夕陽岳からの眺望
夕陽岳から

夕陽岳山頂から北側に少し下ると、建物として体をなしていない9合目小屋跡の分岐に出ます。
左に下る道がAコースでキャンプ場へ下山できます。まっすぐ進みそのまま登ると二等三角点のある三倉岳の山頂です。展望はありませんが、ここから瓦小屋山まで縦走できます。
大栗林の集落へ下山しますが、駐車場まで戻ってこられる距離なので時間に余裕があれば縦走してみてください。約5km、2時間半程度だと思います。途中に展望のいい岩場があります。

瓦小屋山山頂からの眺望
瓦小屋山から

ただ、2022年1月時点では、中岳と夕陽岳との間が通行止めとなっています。平成30年7月豪雨の影響とのことですが、鎖も劣化して危険との情報もあります。いずれにしても通行止め区間を通ることは控えましょう。
登山は自己責任ですが、何かあったときには多くの人に迷惑を掛けることになります。
それが、通行止め区間を通っていたからという理由ではレスキューの人もたまったものではありません。
通行止めが解除されるまで待ちましょう。

ということで、現時点ではBコースの往復(朝日岳と中岳のみ)か、Aコースの往復(夕陽岳のみ)しかありません。
夕陽岳が最も眺望に優れて三倉岳らしい場所なので、Aコースの往復がおすすめのルートになります。三倉岳の山頂を踏み、瓦小屋山までの縦走もできます。

長らく中岳と夕陽岳とを結ぶ登山道が通行止めとなっていましたが、R5.5より解除されているそうです。やっと周回できますね。

瓦小屋山までの縦走ルートですが、瓦小屋山まではいくつもの小ピークを越えていきます。先に述べたように途中、展望に優れた岩場があるので休憩するには最適です。ここで遅い昼食をとることもあります。

標高575mの鞍部まで一旦下ると廿日市市との行政界と分かれます。そこからゆるやかな登りを進んでいくと急登となり一つピークを越えた先が瓦小屋山山頂です。先ほどの岩場より劣りますが、それなりの展望が望めます。

ロープのある急斜面を下り少し進むと登り返します。しかし、それもすぐに左へ折れる分岐点が現れます。間違えて稜線を直進しないように案内標識があります。

左への道に入り、基本尾根道を下ると滑りやすい急坂が現れ、広い尾根へ出ると平坦な道へと変わります。
ここまでの道は夏場には草木が生い茂り、歩きにくくなりそうな箇所もありそうですが、地元の人が草を刈ってくれている箇所もあり、本当にありがたいなと感じます。

ここからが長く感じました。高圧線の下をくぐると人工的な道へと出て、さらにゆるやかになった道を下るとイノシシ除けのフェンスが現れます(チェーンを外せば開けられます)。それを超えるとすぐに車道です。車道をとぼとぼと1.2kmほど歩くと駐車場へ帰ってきます。

ちなみに瓦小屋山まで縦走する時は、車を奥の駐車場に停めるのではなく、600mほど手前にある駐車スペースへ停めるといいです。

広島県下屈指の名峰三倉岳。
通行止めが解除されたら三つの峰の頂へ立ってみてください。
本当にイイ景色です。
寿命と徳と福を司る三つの峰ということも忘れずに。

※注意事項
登山ルート等の内容については、誤解や虚偽のないものであるよう努めていますが、経年変化や、災害による一時的な変化によって、記載された状況が変わっていたり、解釈に見解の相違が生じたりすることがあります。山行の際には、ご自身でも最新の情報を収集してください。

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