カタクリだけじゃない船通山の魅力

船通山は、島根県と鳥取県の県境に位置する山で、その標高は1142.3m。

山頂は開けていて、かなり広いです。カタクリが咲く時期には多くの登山者が山頂で休憩していますが、すべて受け入れられるくらいの広さがあります。100人程度なら余裕な感じ。また、四方の展望がよくて、大山や三瓶山がはっきりと分かります。

古くは「鳥髪之峰」と呼ばれ、「日本書紀」には「出雲国の肥河上なる鳥髪の地上に天界から須佐之男命(すさのおのみこと)が降り立った」という伝説があることから、山頂にはその須佐之男命を祀った祠があります。また、八岐大蛇(やまたのおろち)伝説の中心舞台で、頂上には「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)出顕之地」の記念碑があるなど、神話にちなんだ伝説や地名が随所に残っています。

ちなみに、須佐之男命の母神はイザナミで、そのお墓は出雲と伯耆の境にある「比婆之山」に葬ったと記されていて、その比婆山伝説地は広島県と島根県と鳥取県の3県で10箇所にも及びます。お姉さんはあの天照大御神です。また、天叢雲剣は八岐大蛇を退治したときにその尾から出てきたものとされており、その剣こそ天皇が皇位継承と同時に継承される三種の神器の一つ、草薙剣(くさなぎのつるぎ)です。

鳥上滝は八岐大蛇が住んでいたところで、昔は大きな滝つぼがあったと伝えられており、亀石谷は須佐之男命(すさのおのみこと)が大蛇に飲ませる毒酒を造った石甕があったということで甕(亀)石谷と呼ばれるようになりました。亀石コース沿いの赤川は、大蛇の血で真っ赤に染まったことから赤川と呼ばれ、頂上の北東には稲田姫とその両親が住んでいたとされる家内住山(かないずみやま)があるなど、あちこちで神話のロマンを感じることができます。

そして、何といってもカタクリの山として有名。山頂付近にはカタクリの群生地があり、4月の下旬ころには一面にカタクリの花が咲き乱れ、その景色にきっと誰もが圧倒されることでしょう。

船通山カタクリ
山頂直下のカタクリ
船通山カタクリ
山頂直下のカタクリと保育園児

その時期は平日でも多くの登山者が訪れ、駐車場はすぐに一杯になります。もともと広い駐車場がないのが原因ですが、土日は一体どれくらい混雑しているのかと思ってしまいます(土日に行ったことがないので・・・)。

ただし、この船通山、カタクリの花だけではありません。多くの花々に出会うことができる山です。

ミヤマキケマン、キンシベボタンネコノメソウ、エンレイソウ、ミヤマカタバミ、ナツトウダイ、サンインシロカネソウ、スミレサイシン・・・

サンインシロカネソウ
サンインシロカネソウ

登山道脇にはこうした多くの花々、そして山頂にはカタクリの花。こんなに素敵な山にはなかなか出会えません。

4月下旬、ぜひ登ってみてください。標高差が570mほどありますが、初心者の方でも登れないことはありません。登山道は整備されていますし、なにせ近くの保育園児が遠足で登っているくらいですから。

あちらの子どもはたくましいです。広島市の保育園でこんな山を登らせているところはあるのだろうかと思ってしまいます。

船通山カタクリの道
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登山口

登山口は、島根県奥出雲町側と鳥取県日南町側にあります。島根県側には2つの登山コースがあり、それぞれの登山口に駐車場が整備されています。駐車場はどちらも広くないですが、見た目には亀石コースの登山口の方が多くとめられそうな感じがあります。また、わくわくプール近くに車をとめれば、この2つのコースをぐるりと周回できます。

船通山登山ルート図
地理院地図(ベースマップ)を元に作成したもの:亀谷ではなく亀石です

鳥取県側にも登山コースが2つありますが、登山口は1つで途中で分岐し、山頂近くで合流するパターン。林道沿いに駐車場がありますが、島根県側に比べると狭く、駐車出来て10台程度かなと。

アクセスは車で行くのが無難です。出雲横田駅から斐乃上荘までバスが出ているので、公共交通でも行けなくもないですが、JR木次線の便数が少ないので、うまく接続できるかどうかです。

鳥取県側はマイカーでしか行けません?

感覚的にいうと、島根県側から登る人の方が多いような気がします。

登山ルート

島根県側の森林は、たたら製鉄が盛んであったため、多くの木々が伐採されてしまいました。なので、今ある森林は二次林といえます。一方、鳥取県側は、このたたら製鉄による伐採を免れたとのことなので、船通山本来の森林といえるのではないでしょうか。

その鳥取県側からのコースは、健脚コースと一般コースです。言葉どおりで健脚コースで上り、一般コースで下るがいいのでしょう。

一方、島根県側のコースは、鳥上滝コースと亀石コース。鳥上滝コースはやや傾斜がきついコースで、亀石コースは緩やかな登りとほぼ水平に走る横手道を散策できるコース。

ということは、周回する場合は鳥上滝コースで上り、亀石コースで下山のコースがベストなのでしょう。

ピストンであれば、亀石コースということに。

ちなみに、この亀石コースの上部、標高1000m付近をほぼ水平に走る横手道は、かつてのたたら製鉄でタタラの原料となる山砂鉄を取るための「鉄穴(かんな)流し」の水路跡です。登山道脇には炭焼き釜の跡を多数見ることができ、麓にはたたら跡もあるので、当時に思いを馳せながら登るのもいいかもしれません。

船通山横手道
横手道を歩く保育園児たち

鳥上滝コースには石畳の道もあって、何かのなごりなのだろうかとも思いましたが、よく分からず。

でも、趣があっていい道でした。

船通山石畳の道

伝説、歴史、多くの花々に趣のある道。

船通山、いい山です。

ぜひ一度、登ってみてください。

船通山登山道

※注意事項
登山ルート等の内容については、誤解や虚偽のないものであるよう努めていますが、経年変化や、災害による一時的な変化によって、記載された状況が変わっていたり、解釈に見解の相違が生じたりすることがあります。山行の際には、ご自身でも最新の情報を収集してください。

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