登山用ズボン・パンツに求められる機能|素材を知れば見えてくる

※この記事には一部PRが含まれます

登山用のズボン・パンツ(下着のパンツではなくて)に求められる機能は、一般的には「体にフィットし、脚の曲げ伸ばしなどがしやすくて速乾性に優れたもの」といわれています。

さらに、「重たくて速乾性のない綿製品(コットン)はNGですよ」ともいわれています。

で、登山用ズボン・パンツを買うときに、その素材確かめてます?

素材は二の次というか、一般的な登山メーカーのものであれば、なにかの化学繊維であろうとの認識で購入していませんか?

私自身も、かつては一般的な登山メーカーのものなら試着してみて自分の体にフィットしていて、屈伸やひざを曲げ伸ばしても窮屈でなければ素材のタグを確認せずに購入していました。

なので、履いたときに綿製品と分からなければ、綿製品でも買っていたのかもしれません。

そう、登山用ズボン・パンツに求めていたのは「自分の体にフィットして動きやすいかどうか」であったのだろうと思います。

でも、その素材によって一長一短あるので、その素材を知っておくと「ガッテン」がいきます。

登山用のズボン・パンツは、一般的にナイロンの素材にゴムのような伸縮性を持つ繊維ポリウレタンを織り込むことでストレッチ性を持たせているものがほとんどです。

ポリエステル+ポリウレタンは時々見かけますが、綿製品で登山用を謳っている商品はまずありません。

なぜなのでしょうか?

下記のパンツは足が最も美しく見えると評判のパンツ
ナイロン+ポリウレタン

こちらもナイロン+ポリウレタン
カラーバリエーションが豊富です

こちらはポリエステル+ポリウレタン

それは、想像したらわかりますよね。過酷な環境にさらされるズボンだからです。

登山時においては、足は何時間も繰り返しの動きを続けています。足上げの回数も多いでしょう。さらには、枝や岩に引っ掛かって引っ張られることもあります。

そう、ズボンは常に過酷な状況下にあるのです。

そんな状況の中、綿やウールといった天然素材のズボンをはいていたらどうなるでしょうか。

きっと、そのうち破れたり穴が開いたりしてしまうことでしょう。

ナイロンは「クモの糸より細く、鉄より強い」をキャッチフレーズとして開発された繊維で、その摩擦強度は綿の約10倍といわれています。

さらに、綿より軽量なのです。チノパンなんかよりはるかに軽いですよね。

では、なぜポリエステルではなくナイロンなのでしょうか。

シャツにはポリエステルが多用されているのに…

それは、ナイロンがポリエステルよりも引張に対する強度が上で、耐摩擦・耐摩耗性も優れているからです。

さらにポリエステルより伸びるのです。

ただ、ナイロンの強度は一年後にはやや低下し、紫外線劣化など対候性にはポリエステルに軍配が上がります。

ナイロンは日光や紫外線によって黄色く変色してしまうことがあるので、特に白地のものには注意が必要です。

そう考えるとビジネスシーンでも応用できます。

一般的なスラックスは天然素材であるウールがほとんど。

外回りが多い営業マンだったら、ナイロン素材のスラックスの方が長持ちなのかもしれません。

まあ、上品感や高級感でいうと完全にウールや綿に負けますが。

ナイロンとポリエステルの速乾性

登山用のウェアは速乾性に優れたものが推奨されています。

登山用のズボンにはポリエステルではなくナイロンが多用されていますが、速乾性はどうなんでしょう。

結論から言うと、速乾性はポリエステルに軍配が上がります。

ナイロンのほうが吸水性が高いからでしょう。

ナイロンとポリエステルの吸水性

ポリエステルを中心とした化学繊維であれば吸水性はあるものと思い込んでいる人も多いと思います。

私自身もそう思っていました。

それは、ポリエステルの商品は「吸水(吸汗)速乾性に優れた商品」として売られているからです。

しかし、ポリエステル繊維は疎水性で繊維自体は水分を吸いません。

糸や生地の隙間に水分を一時的に溜め込んでいるだけで、繊維内部までは水分が浸透していない為に早く乾くのです。

では、どうやって「吸水性に優れる」商品としているのか。

それは、親水性化合物を練り込むことで、吸水性を化学的に付与することができるからです。

また、繊維の形状などを工夫することで毛細管現象を起こさせて、天然繊維を上回る水分の吸い上げを付与させています。

こうした高機能繊維として使われているポリエステルと、汎用のポリエステルでは吸水性は異なるということを頭に置いておく必要があります。

ただ、世の中のポリエステル商品は、後加工として親水性に優れた加工剤を塗布することのみで吸水速乾性をもたせようとする商品が大半を占めています。

こうした後加工のみによる吸水速乾性は、繰り返しの洗濯によってだんだんと効力が落ちていきます。

酷いものでは、ポリエステルを使用しているだけで吸水速乾(実際には水は全然吸わない)を謳って売られているものもあるので注意が必要です。

長く着続けたいのであれば、高機能繊維である商品かどうかを見極めることが重要になります。

登山用ウェアがそれなりの値段がするのも、こうした高機能繊維を使っているからでガッテンがいきます。

ナイロンも、ポリエステル同様に吸水性は低い素材です。

しかし、繊維に何の加工もしない場合、吸水率はナイロンのほうが高くなります。

吸湿性

人の皮膚は常に呼吸しています。皮膚の表面からは水蒸気になった「汗」を放出しています。

運動をしたり、気温が高くなってくれば液体の汗が出てきますが、それ以外にもこの水蒸気状態のものが出ているため、登山用ウェアには吸水性のほか吸湿性も考える必要があります。

つまり、登山用ウェアには吸水性だけでなく吸湿性も求められており、この違いを理解することが重要です。

吸水性は、繊維の形状を工夫するなどして付与させることができますが、吸湿性は繊維の素材に依存しています。

よって、素材そのものに親水性を持たせるなど、素材レベルでの改善が必要となります。

が、登山は激しい運動。そのウェアについては素材レベルでの改善を行うのではなく、通気性を備えることで水蒸気を外に逃がしてやるほうが手っ取り早いと思います。

衣服内の湿度は、皮膚より蒸散される水蒸気と外へ放散される水蒸気によって決まるため、通気性があれば衣服内の蒸れ感は低減できます。

ただし、通気性があれば風を通すので保温性には欠けます。

なので、ベンチレーションのように開け閉めできるようなものがあればいいことになります。

※吸湿性と放湿性を向上させた「改質ナイロン」というものもあります。

吸湿性は、ポリエステルよりもナイロンのほうが高いものの天然繊維と比較すると低いです。

ポリウレタン

ポリウレタンの一番の特徴は、ゴムのような伸縮性を持つ伸縮性繊維。

最近では様々な製品に使われるようになりました。コンプレッションウェアや水着、ビジネススーツなどにも利用されています。

ポリウレタン繊維は単独ではなく、他の繊維と合わせて使用されることが多い繊維。

ポリエステルとポリウレタン、ナイロンとポリウレタン、綿とポリウレタンなど組合せは様々。

ポリウレタンの糸の周りに他の糸を巻きつけて使用しています。

軽量でシワになりにくい高い弾力性も併せ持っているため、綿やポリエステルなど伸縮性のない素材と組み合わせることで、伸縮性や弾力性を付与させています。

昔からここまで利用されてたのかな?

私の感覚では、登山用のズボン・パンツで利用されるようになったのはここ最近というイメージです。

登山用のズボン・パンツにはストレッチ性があると歩きやすいので、今ではほとんどの製品に使われています。

しかし、最大の弱点は、性質的に経年劣化が避けられずデリケートな繊維であること。

特に、衣服に使われるポリウレタンは、それを着用することによって水分や大気ガス、熱、紫外線などの影響を受け、徐々に分解されてしまいます。

このような現象を「経時劣化」と呼び、年間を通して着用されることが多いポリウレタンを使った衣類は、これらの物質による影響も多く受けてしまいます。

ポリウレタンを使用していない衣類よりも寿命が短いという点は大きな弱点といえるでしょう。

ズボンを長くはき続けたいのであれば、ポリウレタンが織り込まれていない製品を選ぶ必要があります。

まとめ

以上のことから、登山用のズボン・パンツには、速乾性よりも破れてしまったら速乾性もくそもないという観点からか?伸縮性があって、引張に強くて耐摩耗性に優れた「ナイロン」のものを選ぶことがおすすめと言えそうです。

ただ、更にストレッチ性を持たせるためにポリウレタンを使用しているものがほとんどですが、ポリウレタンは劣化が早いのが弱点です。

登山用のズボン・パンツはそれなりの値段がします。私からすると、お安い商品ではなくシーズンごとに買い替えるようなものではありません。

なので、せっかくポリエステルより高いナイロン繊維の商品を買うのですから、長く履き続けるためにも「あえてポリウレタンを用いずにストレッチ性を確保したもの」を選ぶのがおすすめではないかと思います。

そして、上半身に比べると、下半身はあまり汗を掻かないイメージがありますが、皮膚の表面からは水蒸気になった「汗」を放出しています。

ナイロンはポリエステルに比べると速乾性に欠けるので、繊維に吸わせるのではなく外へ逃がしてやる方が得策だと思われます。

ということで、チャックで開閉できるベンチレーションの機能があるものがおすすめです。

ナイロン100%でストレッチ性があって、なおかつベンチレーションがある。そんな都合のいい商品はかなり少ないですが、下記の商品があります。

けど、高いなぁ…

こちらは、ポリエステル100%版。こちらも高いなぁ…