空を見上げてみよう|雲から天気を予測する観天望気

登山者にとって山行当日の天気は最も気になるところです。

山に潜むさまざまな危険は天気が悪化することによって倍増するのは間違いなく、遭難事故の多くは悪天候時に発生しています。

山行前には天気予報をチェックすることは皆さんもしていることと思われますが、雲を観察して気象変化を予測する観天望気の知識も知っておけば何かと役に立つかもしれません。雲から得られる情報は多いですから...

天気予報がなかった時代には、「観天望気」といって空を観察し天気を予測していました。天気を予測することわざも多くありますよね。

空には、実にいろいろな形や色の雲が出現します。同じ色や形の雲は二度と現れませんから見ていて飽きません。でも、空に浮かぶ雲は何千年経っても大きく変わっていません。いにしえの人々も見ていたであろう空と同じ空を眺めることができるのです。

そんな雲ですが、世界気象機関では雲を10種に分類しています。「巻雲」「巻層雲」「巻積雲」「高積雲」「高層雲」「積乱雲」「乱層雲」「積雲」「層積雲」「層雲」の10種です。それらの雲の名前は高さや形、雨を降らせるかであるルールに従って付けられています。

「巻」という字が名前に付く雲は3種類で、「巻雲」・「巻層雲」・「巻積雲」は空の高いところにある雲です。

「高」という字が名前に付く雲は2種類あります。「高積雲」・「高層雲」で「巻」に次いで高い所にある雲です。

そして、「巻」と「高」が名前の中に入っていなかったら低い所にできる雲になります。

さらに「乱」という字が名前に付く雲が2種類あります。「積乱雲」・「乱層雲」で雨を降らせる雲です。

そして、「巻」も「高」も「乱」も付かない雲が3種類「積雲」「層積雲」「層雲」です。

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巻雲(けんうん)

巻雲

青いキャンバスに白い絵の具を刷毛で伸ばしたような雲です。

すじ雲と呼ばれることが多く、小さな氷の粒で出来た上層雲で、日本を含む温帯地方では5kmから13kmの高さに現れる一番高い雲です。

冬季や緯度の高い地域ではより低い高度でも見られ、「絹雲」とも書かれ絹の糸を伸ばしたようにも見えます。

羽毛状や釣り針のような形になったり尻尾が伸びていたりと様々な形になりますが、強い上空の風に流されて動きが速いです。

じっくりと観察すると上空の風向きがわかりますが、地上の風向きと必ずしも一致していません。

また、雲の厚さは薄く、地上から見ると青空が透けて見えます。

比較的乾燥した上層に氷の粒があるということは、どこかに強い上昇気流があって地面付近の水分が巻き上げられた結果なのかもしれません。

熱帯低気圧や温帯低気圧が近づいているときに最初に現れる雲でもあり、並んで広がったら翌日や翌々日には雨になる可能性があるといわれています。

「すじ雲が出たら雨具を用意」ということわざもあるぐらいですから。

なお、積乱雲の上部で発生したり、飛行機の排気ガスをきっかけとして発生する場合もあります。

いわゆる飛行機雲ですが、この飛行機雲を見たら天気が崩れると言います。

このようにこの巻雲は、天気の下り坂の兆候と説明される場合もありますが、低気圧が離れて通る場合は悪天に結びつかないこともあります。

巻層雲(けんそううん)

レースのカーテンのように空を広い範囲で覆い、「うす雲」と呼ばれ青空ではなく少し白みがかかった水色の空となっています。

巻雲同様に氷の粒でできた上層雲で、日本を含む温帯地方では5kmから13kmの高さにあらわれます。

薄く層状に広がり雲の厚さが薄いため、陰影がなく太陽の光が透過します。

青空に散在していた巻雲がいつの間にかのっぺりとした巻層雲に変化したり、より低い高度の高層雲が出てきたりするようなら天気が下り坂になるかもしれません。

このように巻層雲は天気の下り坂の兆候で、巻層雲を構成する氷晶が六角柱状であった場合、太陽の周りに「暈(かさ)」という明るい輪ができます。

この「日がさ」や「月がさ」は低気圧がやってくる前に起こりやすく、「日がさ月がさは雨天の兆し」ということわざがあるくらいよく当たります。

なお、太陽にできるものを日暈(にちうん)、月にできるものを月暈(げつうん)と呼んだりもします。

巻層雲は一年を通して見られますが、梅雨前線が南海上に離れて停滞する時期には暈がよく観察されます。

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巻積雲(けんせきうん)

群れを成す上層雲で、その形状から「いわし雲」や「うろこ雲」と呼ばれています。

巻雲同様に氷晶でできた雲で太陽光は透過します。

また、雲の厚さが薄いので陰影はできません。

通年で見られますが、秋や春によく現れる雲で、俳句の世界では秋の季語となっています。

群れのようなパターンは、上層で対流(上下方向の空気の運動)が起こっている場合にできます。

上昇流の部分が雲で、下降流の部分が青空です。

巻積雲は低気圧や温暖前線の前面に現れやすく、うろこ雲が観察できるときは低気圧や前線が近づいてきている証です。

空一面にうろこ雲が広がり、他の雲が出てきたら雨が近づいてきていることが多いようです。

高積雲(こうせきうん)

モコモコとした形状、群れを成している様子。

「ひつじ雲」の名称がぴったりの雲です。

巻積雲同様に秋を象徴する雲で、巻積雲よりも低い高度にあらわれ、見た目も大きいです。

標高2000mの山に登れば間近に見られる中層の雲です。

大部分が細かな水滴からなっていて、やや厚みのある雲で太陽光を遮り、雲の底が少し灰色になります。

「巻積雲(うろこ雲)」と見分けが難しいかもしれませんが、人差し指の先っちょより小さければ「巻積雲」、大きければ「高積雲」と判断していいです。

ただし、これは平地で見たときの話し。標高2000mの山に登れば「巻積雲」もより大きく見えるので判断が難しくなります。

観天望気については、雲の塊が徐々に薄くなって太陽光が透過するようになり、高度が高くなってきたら悪天の兆候は小さいといえます。

逆に徐々に厚みを増したり、雲量が増加したり、すき間に別の雲が見えたり、高度が低くなってきたら悪天を疑ってみましょう。

高層雲(こうそううん)

「おぼろ雲」とも呼ばれます。上の写真のようにおぼろ雲が太陽や月にかかっている状態を、「おぼろ太陽」や「おぼろ月」といいます。「おぼろ月夜」という言葉を聞いたこともあるのでは。

高層雲は、低気圧や前線が近づいてきているときに、巻雲や巻積雲などの上層雲に続いて現れる雲で、「おぼろ雪は雨雪近し」といわれています。

うす雲⇒うろこ雲⇒ひつじ雲⇒おぼろ雲と変化し、雲底が低くなってきたなら、家路についたほうがいいのかもしれません。

積乱雲(せきらんうん)

登山者が最も警戒しなくてはいけない雲です。

沢登りの時には最も注意が必要になります。

上流に大雨が降ると、狭い谷間に雨水が集中して鉄砲水が起きます。

沢では空の様子がよく見えないので、近くで雄大雲が発生しても気が付かないからです。

日中気温が上昇し、地表・水面が暖まることで上昇気流が発生、積雲が現れます。

積雲が成長すると雄大雲(雄大積雲)になり、そこからさらに発達すると積乱雲になります。

雄大積雲が発雷するようになると積乱雲となります。別名「かみなり雲」、雄大積雲と同様に「入道雲」と呼ばれることもあります。

雲の高さは高度13kmまでおよび、対流圏の天井に達し、これ以上上昇できなくなると、朝顔の花のように左右に広がる「かなとこ雲」まで発達します。

積乱雲

そこまで発達したら、激しい雷雨、突風などを伴うことが多くなります。

積乱雲は10種雲形の中では最も激しく、落雷や降雹(こうひょう)、突風や強雨、平地では竜巻の原因にもなります。

積雲(せきうん)

積雲が出ていると、好天の証し。しばらくは良い天気が続くことでしょう。

ただし、朝から出現していたら、日中に雄大積雲(=入道雲)になる可能性があるため注意が必要です。

天気の良い日には、肉まん型の雲が浮かんでいることがあります。

「わた雲」とも呼ばれる積雲です。

一番雲らしい雲だと思います。また、青空に浮かんでいるのがいちばん似合うと思います。そして、形が変化するので色々なものを想像させてくれます。

高度は、0.5km~2km付近。輪郭がはっきりしていて上部はモコモコと白く輝き、多少厚みのあるものは下部が灰色となっています。

日射によって地表面が暖められると局地的な上昇気流が生じ、水蒸気が凝結する高度で積雲が発生します。

積雲が発達すると雄大積雲になり、積乱雲と区別しにくくなります。

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